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読んでから(『シスターズ・ブラザーズ』)、観ました(『ゴールデン・リバー』) ~原作(ブッカー賞受賞)も映画(フランス人監督)も、斬新的、見所満点の、父親からのトラウマ、心理的ゴーストから逃れる、無骨な兄弟愛の〈西部劇〉です。「考えられない結末」です。

 新聞書評欄を読んでいたら、英国の文学賞である〈ブッカー賞〉が、いかに権威があるかの記事が載っていました。
 そこに、たまたま、目についたのが、2011年の〈ブッカー賞〉の最終候補までいった作品です。それが、今日お話しする、

パトリック・デヴィット(茂木健・訳) 『シスターズ・ブラザーズ』(東京創元社)

でした。

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 ゴールド・ラッシュ時代の、西部の殺し屋、シスターズ兄弟(ブラザーズ)の物語です。
 カナダでも、4文学賞を受賞し、日本では、2014年「このミステリーがすごい」第4位にもなっています。

 映画のほうは、
 2018年、米仏羅西合作作品の

『ゴールデン・リバー』(監督・ジャック・オーディアール【仏】)

で、7月5日から公開されました。
 ヴェネチュア国際映画祭やフランスアカデミー賞を受賞しています。

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 まずは、原作を読み終え、9日(火)に、「日比谷シャンテ」で映画を観て来ました。
 上映2時間前に、チケットを買い、余談になりますが、日比谷シャンテ3階にある、きわめて特色ある良質な書店「HMV&BOOKS 日比谷コテージ」で、本を見て、終映後に行く食事場所の見当をつけて(結局、地階の「五穀」で、金目鯛の煮付けを食べることに決めました)いたら時間がすぐ潰れました。

 さて、この映画は、ネットの『口コミ』でも、ほとんど、結末は、書かれていません。そうでしょうね、この手の映画では、考えもしない結末ですからね。
 で、私も、結末を書いて仕舞うのは失礼だと思って、書くのは止めにします。(ただし、最後の★の後に「追記」しておきますので、どうしても知りたい方は、どうぞ。

 で、まず書物・・、

(以下、下記の続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)

 語りが、弟・イーライです。読みやすく、次々と物語が展開します。
 前半は、オレゴン→メイフィールド→サンフランシスコ、サクラメントの、一種のロード・ムービー、道行き、道中記です。

 1851年。目的は、ボス〈提督〉から命じられた、金鉱脈を見つける薬品を造ったハーマン・カーミット・ウォームを殺すことと、そのレシピを奪うこと(正確には、聞き出して、後、殺すこと)。
 サクラメントには、連絡係のモリスが、ウオームの居場所を探し出している手筈になっています。

 兄弟で無ければ、とっくに殺し合いになっていたろう、二人ですが、何となく支え合っていて、仲が良い。兄弟で、当時珍しい〈歯磨き〉を始める微笑ましさもあります。

 冷静、冷酷だが酒と女に溺れる兄・チャーリーと、優しく、女に惚れっぽいが、キレると手が付けられない弟(本書の語り手)イーライです。
 弟は、そろそろ足を洗って、洋服屋を始めたいと思って、二人は旅を続けます。
 途中、メイフィールドが牛耳る街で、戦ったりして、やがて、荒んだカリフォルニアに着きますが、モリスは、ウオームに心酔して、仲間になって、薬品を使っての金鉱探しに行っていました。
 河で、腹に一物ある同士4人で、薬品を使った試掘をやって見ますが・・・(どうしても、結末をご覧になりたい方は、「追記」をどうぞ。)。

 殺しの場面や、怪我した愛馬の眼球をくり抜いて治療する場面など頻出しますが、意外に残酷ではありません。
 イーライの愛馬・タブ、ダメ馬ですが、愛嬌があって、印象に残ります。映画では、この馬をどう描くんだろう、と思っていました。

 道中、不思議な泣く男、インディアン、親に置いていかれた少年、毒で動物を殺す少女、陰影深い娼婦たち・・そこは、文学作品らしく、多彩な人物が登場します。

 終盤に、兄弟とウオームの父親の話が長く語られます。
 ひどい父たちで、子どもにとって、精神的なゴーストになっているのは明らかです。ここも、文学らしさが出ているところです。(後述しますが、映画は、ここをキモにしました。)

 兄弟 vs ならず者3人が対峙し、「3つ数えたら」撃ち合うと決めて〈決闘〉となりますが、兄弟は、「1つ」数えたところで撃って、相手を殺してしまう。ズルですが、勝てば良いという発想が、西部劇に斬新的です。

 ・・・さて、映画のほうです。

 開巻冒頭、闇夜の銃撃戦を遠くから火花だけで写し、強い、殺し屋兄弟を印象づけます。

 映画は、読者が小説を《解釈》するところを、映画なりに、きっちり《解釈》してくれるのが特長です。

 そのために、まず、映画では、兄と弟が、人柄などはそのままで、そっくり入れ替わっています。やたら、原作を読んでいるので、戸惑いから脱するのに苦労しました。

 つまり、兄がイーライ(小説では弟)、弟がチャーリー(小説では兄)、提督から指揮をうけるのも、しっかり者チャーリーです。

 これは、一体、どこに一番影響するかというと、父殺しです。ひどい父でした。
 小説では、兄が父を殺し、幼い弟イーライは、外で遊んで知らなかったことになっていますが、映画では、弟イーライが殺したこと、それに、兄が「俺が殺すべきだった」負い目を負う展開になっています。守るべきは、母
 ですから、最後、兄は、弟を守るべく、弟が考えた提督への《計画》を実施していきます。
 兄弟は、父のゴースト、トラウマを負っています。この映画の眼目の一つです。
 結局、雇い主の〈提督〉も、父のような男で、その男に兄弟は人生を縛られています。ですから、それがいなくならない限り逃れられないのです。

 一方、小説どおり、連絡係のモリスも父からのトラウマを抱えていて、ウォームの話に賛同する遠因もここにある、という解釈です。

 素晴らしい余韻で映画が終わります。これが、予想もしない展開なのです。
 全編の殺しも、マカロニ・ウエスタンのような殺伐とした印象が残りません。

 さて、この映画は、まず、監督が、フランス人というところは、知っておきましょう。
アメリカ人の発想には縛られません。
 それに、例えば、映画ではフランス人ならでの逸話が使われます。小説にはない、ウォームが、ダラスに理想共同生活社会を建設するために金を掘ることになっていますが、年代こそ少し違いますが、実際、フランス人、ヴィクトル・プロスペール・コンシランが、ダラスに、フーリエ主義の理想郷を作ろうとしたことがあります。

 主演は・・、
イーライ・シスターズ: ジョン・C・ライリー
チャーリー・シスターズ: ホアン・フェニックス
ジョン・モリス: ジェイク・ギレンホール
ハーマン・カーミット・ウォーム: リズ・アーメッド
そして、
母・ミセスシスターズ:キャロル・ケイン
の布陣です。
 ジョン・C・ライリーが、映画化権を買いました。

 映画では、ゴールド・ラッシュ時代の開拓雰囲気が小説以上に上手く描かれます。こういうところは、さすが映画です。幌馬車隊、家の建設などの再三の場面で良く描かれています。
 一方、小説にある枝部分の多数の逸話は、ほとんどカットされて、幹の部分に集約されて、物語が進みます。
 ですから、例の、馬・タブの物語も、描かれはしますが、細かい話はカットされているので、映画だけでは、あまり意味が判然としないかもしれません。
 とまれ、普通のウエスタンと異なる、秀作でした。★

お約束の・・・、
 追記

 結末は、黄金を巡っての裏切りと争い、のような雰囲気で映画宣伝していますが、全くちがいます。

 砂金取りの薬品で、ウォームとモリスは、断末魔のうちに死にます。(小説では兄の)チャーリーも、やはり薬品で右腕をやられて、結局、切断。
 〈提督〉を裏切って、足を洗っては、ずっと追われる羽目になると考えて、イーライは、提督のところに戻って、提督を、風呂で溺死に見せかけて殺します。
(映画では、提督の手下に執拗に追われます。最後、提督を殺すために、二人が行ったら、二,三日前に、既に〈提督〉は、死んでいて葬式をやっています。どおりで、二,三日前から追っ手が来なくなった訳です。)

 ・・二人して、故郷の母親の元に帰ります。

 映画では、平原にある美しい家、子ども時代のベッドに寝ると足が出てしまいます。熱い風呂に入り、母親が湯を入れてくれます。
 こんなアットホームなエンディングのウエスタンは、考えられなかった。
広告の、思わせぶりな「考えられない結末 !」って、これなんです。

 ~終

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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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