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ギヨーム・ド・ベルティエ・ド・ソヴィニー『フランス史』 ~大部なので、読み方を工夫しました。一人の著者による、公平で、平易な通史で、面白さに、どんどん前に引きずられて、あっという間に六百頁以上を読了しました。これを機会に、新聞の『書評』欄に一言苦言を。

 余談になりますが、ちょうど絵画の印象派登場の頃の、日本も知っておこうと、明治神宮外苑にある「聖徳記念絵画館」に行ってきました。
 例の如く、妻と、新橋・第一ホテルでランチ・ブッフェを食べた後、地下鉄銀座線で〈青山一丁目〉に出て、10分余歩いて、若い頃から見てはいるけれど、まだ入ったことが無い「絵画館」(重要文化財・1926年竣工)【写真は最後】で、たっぷり2時間弱、明治天皇のストーリーを80枚ほどの大きな絵画でたどりました。参考になりました。

 さて、今日ご紹介する本書を読んでいて、例えば、国立西洋美術館の庭にあるロダンの彫刻《カレーの市民》(1888年作・この〈カレー包囲戦〉は、1346年英国エドワード三世・仏フィリップ六世の治世にフランスのカレーで起こりました。)や、シェイクスピアの史劇《ヘンリー5世》(1599年)、ジャンヌ・ダルク(1431年に火刑)、さらには、今、上演中のミュージカル「ピピン」という題名からフランスにいたピピン二世(741まで在位)や三世(ー771)アキテーヌ王・ピピン(-830)を思い浮かべたり、納得したのは、再三でした。
 その本は・・、

ギヨーム・ド・ベルティエ・ド・ソヴィニー『フランス史』(講談社選書メチエ)

です。本年4月の新刊です。

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 本のぶ厚さ(668頁)! に一瞬たじろぎ、後述しますが、読んで行く章の順序を、ちょっと、自分のニーズに合わせて少し工夫しました。
 しかし、面白さに、すぐ夢中になり、厚さなど気にならなくなりました。

 ところで、本書の監訳者・鹿島茂の「あとがき」(638頁)にありますが、「一人の著者が、それも真っ当な歴史家による1冊読み切りのフランス通史」は、「日本には・・学界の、マルクス史観や実証主義史観の影響もあって・・、本書以外無い」そうです。
 さらに言えば・・驚きですが・・フランスにも本書が出版される以前は無かったとか。

 特に、実証主義になってからは、学者の専門が細かく細分されて、専門外の部分は素人並の知識しか無い、というのは、なるほど、と頷かされます。

 本書は、朝日新聞の書評に取り上げられていましたが、このような肝心な情報は書かれていません。
 その書評では、「人物のエピソードが面白く書かれている」云々、とありました。
 実は、私は、それにひかれて買ったのですが、人物のエピソードが面白いと言うのは兎も角、もう、内容全体が実に要領よくまとまっていて、大部ながら、一気に読んでしまう面白さでした。
 書評は、こういうところにきちんと触れるべきでしょう。

 ついでながら、近時の新聞書評は、評者に興味のあるペダンチックな書物が取り上げられることが多く、内容も難しすぎるかと思えば、これ、ちゃんと最後まで読んだの ? と思う内容もあります(ついでながら、書評頁が、4頁から3頁になったのも不満です。)。

 ところで、先の書評で、「人物のエピソードが面白く書かれている」例として、ドゴールが引退後、「回想録の執筆に専念している」など挙げていましたが、書かれているのも、唯、それだけです。あとは、何も書かれていません。一体、どこが「面白く書かれている」のでしょうか(580頁)。

 閑話休題。しかし、本書は、実に面白かった。しかも、フランス史を通じて、結局、ヨーロッパ史全体のアウトラインも理解できます。お薦めです。

 読み終えて、少し極論になりますが・・思ったのは、

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)

1 ヨーロッパ各国は、王位と多い王の政略結婚で、血も繋がっていて、また、常に、攻めたり攻められたりで、全土、ご親戚のような間柄で、国境も人為的なようなもので必然性が無いように思えます。ですから、EUで、一括りはある意味、必然性があるような感じです。

2 フランスは、結構、英国から、一番攻められたり(代表例は「百年戦争」)、裏切られたりしていますし(ま、頼ったこともあるんですが)、また、ドイツからも、何度も攻められていますし、その上、ドイツからは、第一次と第二次の両世界大戦で蹂躙されて、大きな被害を被った挙げ句、賠償なども、アメリカの介入で、「世界不況だから」などと、結構、チャラにされたりしているんですねえ。

3 その英国は、第2次大戦の最中に、敵国ドイツに捕られまいと、フランスの港にあるフランス艦船を沈めてしまい、フランス人水兵を随分死なせています。当時は、恨み骨髄だったようですが、今は、はて・・。

4 ヨーロッパに、マルキシズムとアメリカが入って来て、王権(自国の王権の相続争い、他国との争いの2つあります)と市民と教会(カトリックとプロテスタントの争いの2つあります)の争いに、随分、話がややこしくなってきました。
 考えれば、アメリカは、昔は、ヨーロッパの植民地だったのですが、大国になって、先のドイツの賠償問題のようにヘンな口出しもしているみたいな・・。

5 それに、1096年からの十字軍もわすれることは出来ません。第2回・1146年・・第7回・1226年、と続きます。

 ・・で、読んで行った章の順序の工夫ですが・・・、

1 まずは、このところ読んだり観たりしている、絵画の「印象派」時代の歴史が書かれている、1800年代の章から読んで行きました。

 この時代は、プロイセン(ビスマルク)との普仏戦争(ふふつせんそう・1870)や2万が死んだパリ暴動(1871)があったとは言え、ナポレオン一世の甥、ルイ・ナポレオン・ポナパルト(ナポレオン三世・1808-1873)下の経済膨張期(1852-72)で、経済学でいう〈テイクオフ〉の時代でもあり、比較的安定期でした。
 セーヌ県知事・オスマンパリ大改造(1860~)も行われています。
 ただし、外交は、1855年にクリミア戦争に勝った外、矛盾する2つの目的を追求して、ダメな時代だったとか。
 つまり、印象派誕生は、国内が、比較的落ち着いた時代に恵まれました。

 本書で、今までごっちゃに理解していた、ナポレオン一世と三世の違いをよく理解できました。

2 次に読んだのは、その少し前に遡って「フランス革命」を中心にした時代です。

 1789年のフランス革命から、ナポレオン一世の退位(1814・エルバ島)・復帰(1815・「百日」)・退位、死(1821・セントヘレナ島)。ブルジョアジーの台頭・支配時代(1830・七月革命)、王権神授説から国民主権時代の始まりです。
 ルイ・フィリップ一世(オルレアン公。-1850)時代に、三色旗が出来ました。
 皇帝、王、庶民、教会、入り乱れての戦乱時代でしょうか。
 画家・ドラクロアや音楽家・ベルリオーズが活躍し出します。

3 ここまで読んで、知って来ると、なぜ、革命が起こったか、前段階を知りたくなりますので、もう少し前に遡ります。1600年代半ばくらいからです。

 王位継承の難しさがあります。でも、ダメな王も幾つかは実績をあげていますね。
 また、若い王の母親が摂政になって権力を壟断したり、しかも、その母が、政略結婚で外国から来た皇后だったり、複雑になります。
 一つ、「女系王位を認めず、夫君選定の難しさから逃れることが出来た」という記述が面白い。なるほど。

 王位が比較的輝いていた時代の、分かりやすい継承は、例えば・・

44歳に暗殺された〈ヴェール・ガラン(女たらし)〉・アンリ四世(1553-1610)に続いて、
9歳で即位したルイ十三世(ルイ公正王。-1643。夫人は、スペインのアンヌ・ドートリシュ)、

22歳での即位、ルイ十四世(1715。夫人は、スペインのマリー・テレーズ。)、
5歳のルイ十五世(1774。ポンパドール夫人が権力を振るいました。)、

20歳のルイ十六世(1793。夫人は、オーストリア皇帝の妹・マリー・アントワネット。)
は、スペインやポーランド、イタリア、オーストリア王室との係わりもあって内容が豊かです。

フィリップ六世とエドワード三世(フィリップ四世の娘・イザベルが英国エドワード二世との間に生まれた)に始まり、ヘンリー五世(-1422)とシャルル七世(ー1461)を経る百年戦争(1337-1453)があったりします。
シャルル七世は、ルイ八世とも対立していました。

因みに、フィリップ四世(1285-1314、端麗王)の時代には、「王が望むがごとく、法は望む」、と言った絶対権力がありました。

 次には、封建領主、貴族、王権、王権相続争い、カトリックとプロテスタントの争い。さらには、フランス王に英国王がなったりします。

4 続いても、同じ系統の話ですが、その前には、王権が強化され、〈売官制〉や領主からの〈国王借款〉制度も出来ています。スペインとの戦争時代もあります。
 ハプスブルグ家の神聖ローマ帝国のプレッシャーにもさらされます。
  さらに、その前。例えば、ルイ一世の子どもや甥は、ドイツ王やイタリア王になっています。

5 ここまで読むと、次は、一番最初(ガリアの時代)に戻って、そもそも、フランス国土や始まりはどうだったのか知りたくなりますから、最初の1頁から・・。という順序です。
 ローマ帝国の侵入、ゲルマン人やフン族の侵入があります。

 こうして見ると、フランス、ドイツ、英国、北欧(ヴァイキング)、ロシア入り乱れて領土を取り合っていたのです。これを考えると、EU、一国家は必然では、などと考えてしまいます。

 さて次は・・、

6 後半、近・現代です。第1次大戦以降・・マルキシズムとアメリカが加わって来ます・・は、新聞を読むが如く、どんどんよめます。
 因みに、自動車会社ルノーが国有化されたのは、第一次大戦後、ドゴール時代です。また、ドゴール時代に、フランスから、アメリカ戦略爆撃機基地は、1959年に無くなり、NATO司令部もベルギーに移っています。ドゴールは、反米政策をとりました。

7 ドゴール時代の終わり(1969)と死(1970)から、大統領は、ジョルジュ・ポンピドゥーヴァレリー・ジスカール=デスタンそして、7年間の大統領任期を2期全うした・・二期目当初には、もう癌であることが自ら判明していました・・フランソワ・ミッテランの政権となり、その死(1996年)で、この本は終わります。

 ・・と、こういう順序で、国王の系図と重要事項などをメモしながら読んで行きました。
 遡って行ったので、折角書いた王の系図が、「どっちが前だっけ・・」と分からなくなったりしました(笑)が、あっ、と言う間に読了でした。

 今まで、美術や音楽の解説などを読んでいても、朧気な、固有名詞が、これで線上にきれいに並んで頭の中に入りました。今後の、読書、観劇に役に立ちます。
 最後に、絵画館の全景です。★

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Re: 長い人生、ゆっくり読書の楽しみを熟成してください。

 読むべき本、読もうと思う本がたくさんあるほど幸せなことはありません。僭越ですが。

書評拝見してとっても読みたくなったのですが、読むべき本の(アマゾンの欲しいものリストにアップしてある)多さと、「今自分はフランス、ヨーロッパ史に興味があるか?」を考えて躊躇中…。でも、リストに追加だけしてみました。
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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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