FC2ブログ

重木昭信 『音楽劇の歴史 オペラ・オペレッタ・ミュージカル』 ~音楽劇の歴史を、受容する観客側からの変遷で書いた意欲作です。特に、アメリカの音楽劇(ミュージカル)史が俄然詳しく、面白い。

 今日のお話に関係しますが、今年の「トニー賞」ミュージカル部門は、「ヘイディズタウン」が8部門で受賞しました。この作品は、オペラ「オルフェウスとエウリディーチェ」を現代風にした作品だそうです。
 オペラ「オルフェウスとエウリディーチェ」は、オペレッタ「地獄のオルフェウス(天国と地獄)」の基にもなっています。

 さて、知っているつもりでも、まして、そうでないところは、読み出したら、面白くて止められない本が今日ご紹介する本です。

重木昭信 『音楽劇の歴史 オペラ・オペレッタ・ミュージカル』(平凡社)

を読了しました。本年3月刊行です。
 オペラ、オペレッタ、ミュージカルの、「音楽劇」の歴史が書かれています。

20190605145551e3a.jpg 

 私は、オペラ、オペレッタ、能・狂言、歌舞伎、文楽・・と一通り観劇歴がありますが、ミュージカルは、舞台では、このブログにありますが、2010年6月に帝劇で、作曲・レナード・バーンスタイン、台本・ジョン・ケアードの「キャンディード」(初演は、1956年)を観た以外、多分観ていません。

 映画では、幼時に、「オズの魔法使い」(製作は1939年。なお、私は、1947年生まれです)を観て後、「ウエストサイドストリー」や「サウンドオブミュージック」、「メリーポピンズ」を20代前後に観た程度でしょう。

 この本は、ミュージカルに詳しい著者ならではで、ミュージカルというもの、を良く理解できます。

 考えてみますと、オペラも現代のミュージカルも、ある意味、共通する歴史があります。
 アメリカは、貴族・王族がいませんが、ヨーロッパの革命に近い、南北戦争(1861-65)、不況(1873-96)・大恐慌(1929)、世界大戦(1914-18)、禁酒法(1920-33)などが、微妙に音楽の傾向を変えています。

 音楽的には、何れも、台本が〈薄い〉ので、演出家の解釈・出番が大きくなっていることや舞台装置を競うことなど同じ傾向です。
 一方、オペラとミュージカルの大きな違いは、ミュージカルは、《踊り》が、《歌(音楽)》・《台詞》と全幕で融合しているところでしょうか。あと、ミュージカルは、マイクを遣い、オペラは、声楽家が声を競うこと。
 その他の、変遷は、似たようなものと感じます。

 著者は、音楽専門家では無く、実業家ですから、まさに、趣味が高じたところでしょう。
それが、この本を、理解しやすく、ツボにはまって、読んでいて面白い仕上がりになっているのでしょう。
 前半、100頁ほどは、要領よく(本当に、的を得たまとめ方です)、ヨーロッパのオペラ、オペレッタなどの歴史が語られます。

 後半が本書の特長です。アメリカの音楽劇の歴史、ミュージカル誕生から現在までの歴史が、俄然、面白い。

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)

 アメリカは、ヨーロッパのように王室や貴族がおらず、その意味では、当初から、移民・市民対象の音楽劇が流行したわけです。
 それで、ヨーロッパからオペレッタ・・フランスのオペラ・コミック、つまり、音楽の間に台詞が入ったもの、が発展したもの・・が流入しますが、それも、第1次世界大戦(1914-18)で、ドイツやオーストリアが敵国になり、オペレッタの流入が一息つくことになります。

 パリのオペレッタの始まりは、1858年の「地獄のオルフェウス(天国と地獄)」(オッフェンバック)。ヴィーンでは、1865年の「美しきガラテア」(スッペ)、ロンドンでは、1875年の「陪審裁判」(ギルバートとサリバン)。
 アメリカ最初のオペレッタは、ジュリアス・アイヒバーグ作曲、1862年の「アルカンダラの医師」と言われます。アイヒバーグは、1857年にドイツからの移民です。

 南北戦争(1861-65)後には、南軍の楽器が流通して、ミシシッピ沿岸で音楽がさかんになり、1910年代のラグタイム、1920年代のジャズの萌芽が見られます。
 ジャズは、やがて、哲学的というか高度化して、人々は、ロックに親しみを覚えるようになります。

 その中でも、1920~40年代は、アメリカ音楽史にとって折り目の時代でしょう。

 それまでヨーロッパから入って来た、オペレッタやエドワード期ミュージカルコメディから、
1840年代のミンストレルズ(黒人や黒人姿でのショー)、
ヴォードビル(個人芸の持寄りショー)・・なお、元は、オペラの風刺作品のことを言いました。なお、オペラのパロディはバーレスクと言いました。バーレスクは、今日では、ストリップショーに近い物を言います・・、
エクストラヴァガンダ(屋外での大規模な見世物ショー。例えば、ヒッポドローム劇場は、5,200人規模で、アメリカ開拓史などが演じられました。)、
レヴュー(ヴォードビルと違って、一つのテーマで演出)、
ジャズ
などが誕生して来ましたが、
1920年代の〈アメリカ製オペレッタ〉、そして〈アメリカ的ミュージカル〉を経て、
1930-40年代の〈台本ミュージカル〉のような、アメリカ的な音楽劇がまとまって来ます。
(1950~60年代は、ミュジカル・レコードも全盛となりました。
 さらに、1982年には、CDが実用化されます。)

 まず、
アメリカ的ミュージカル
は、身近な出来事を、日常の話し言葉で、ジャズのほか多様な音楽を遣って、ダンスも社交ダンス・タップダンス・モダンダンスと多用に用いられました。
 もっと重要なのは、この頃から、作曲者(ソングライター)と編曲家(アレンジャー)が分離していったことでしょう。オペラ作曲家のことは、コンポーザーといわれました。

 台本・オスカー・ハマースタイン二世(1895-1960)の「ショー・ボート」(1927)が、代表的です。これが、次に繋がります。

 それに続いて、物語と音楽と踊りが密接に結びついて、歌や踊りによって物語が進行する〈台本ミュージカル
が全盛となります。

 1940年の「友人ジョーイ」や1941年の「暗闇の女」などの秀作を経て、1943年の「オクラホマ!」が、2,212回の上演記録をたてます。
 台本・オスカー・ハマースタイン二世、作曲・リチャード・ロジャースです。同作には、振付け・アグネス・デ・ミル(1905-92)も大きく貢献しました。

(その後、1956年の「マイフェアレディ」が、2,717回の記録となります。)
 なお、振り付けには、1978年に、ようやく著作権が認められます。
 作曲・レナード・バーンスタイン(1918-90)の「ウエストサイド物語」(1957)は、物語バレエと台本ミュージカルの最高傑作と言われます。振付けは、ジェローム・ロビンス(1918-98)です。
 なお、ニューヨーク市立図書館には、ダンス振付け資料などを集めた、「ジェローム・ロビンス・ダンス部門」という特別フロアがあります。

 以後、「回転木馬」(1945)、「南太平洋」(1949・ピューリツア賞受賞)、「アニーよ銃をとれ」(1946)・・と続きますが、これらの作品前2作や、1950-60年代は、曲よりも先に詞、台本が書かれるようになったのが、成功の大きな要因の一つです。
 「王様と私」(1951)、「サウンド・オブ・ミュージック」(1959)が大ヒットします。
 「屋根の上のヴァイオリン弾き」(1964)は、3,242回続演されます。

 それらに伴って、いろいろな賞も誕生し、
1947年トニー賞(1944年創設のドナルドソン賞を吸収)
1949年エミー賞
1959年グラミー賞
というものです。
 なお、映画のアカデミー賞は1929年に、ピューリツア賞は1917年に、創設されています。

 やがて、マイクの使用が普通となり、
ロック・ミュージカル
〈歌い通し〉のロック・オペラを含みます。1971年の「ジーザス・クライスト・スーパースター」。)
や、小さなエピソードの積み重ねて全体のテーマを表現する、その分歌や音楽の比重の高い、少しレヴューに似た、
コンセプト・ミュージカル〉(構想ミュージカル)、
が登場します。
 「コーラス・ライン」(1975)は、6,137回続演しますが、旅行客も多くなっています。 「シカゴ」(1975)も、台本ミュージカルのプロットを薄めて、振付けと演出に重点を置いています。

 台本を薄くしてプロットが曖昧、歌と踊りとスペクタクルが増え、スピーディーな展開となる、この傾向は現代に至っています。
 さらに、また、現代は、再演とメガヒット作の長期上演、ヒット曲を集めた
ジュークボックス・ミュージカル
が特色です。映画の舞台化、ディズニーの進出もあります。
 いずれも、観客に旅行客も取り込め、また、長期上演でコストを回収できるところです。

 面白くて一気に読了しました。

 特に、ミュージカル史を体系的に知ることが出来て有益です。
 ミュージカル史を知って、大いにミュージカル観賞に興味が沸きました。これから、台本がしっかりしていて、音楽・歌と踊りと台詞が融合した名作を厳選して、観て行こうと考えています。★
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

感動人

Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

最新記事
最新コメント
FC2カウンター
検索フォーム
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

記事のカテゴリ
読みたいテーマを選択してください。
リンク
RSSリンクの表示