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文楽の神髄を感じたような、圧巻、熱演の千歳太夫(長局)~国立劇場・五月文楽公演『加賀見山旧錦絵』



 東京は真夏日とかの、21日(日)、午後4時から、国立劇場で、五月文楽公演、

加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』

を鑑賞しました。
 この日は、終演後、そんなに家が遠くないのに、劇場近くのホテルに泊まって余韻を味い、この記事を書きました。
 翌日、久しぶりに、ずっと馴染みだった、大手町の床屋を訪ねることにして予約していました。

 1時過ぎに食事し、ビールを飲んでから、ホテルにチェック・インして、シャワーを浴びて、いざ、〈出陣〉。


 さて、この文楽作品は、天明2年、容楊黛(ようようたい)の江戸浄瑠璃です。
 この日の席は、私が、最も好む、5列2x席です。通路際。

 今回の公演では、第一部が、英太夫改め、六代目豊竹呂太夫の襲名披露が行われましたので、ロビーも、御贔屓さんらしい和服の方も多く、華やいでいます。
 私の鑑賞したのは、戯曲自体興味のある、第二部です。
 
 
 長局(ながつぼね)の段
竹本千歳太夫(三味線・豊澤富助)、
が圧巻の熱演です。

 約66分、西風の、言語の重みが要求される、太夫、至難の難曲を見事に、一人でやり抜きました。文楽の神髄を感じた思いです。

 登場人物が2人だけで、しかも、各々本心を隠しています。
 ・・動きが少ないので、近くの、文楽初心者らしき、お嬢さん、退屈で、間が持たず、じっと座っていられない様子で、あれこれ、ごそごそ動きっぱなし。

 「長局」とは、奥女中に与えられるいくつかの部屋がある、長い一棟。
 尾上は、いつもよりも遅く、「羊の歩み、隙(ひま)の駒」【屠殺場に引かれていくようにゆっくりと、足が進まないのに時間ばかりがたってゆく例え。】のように、部屋に戻って来て、憔悴しきった様子。食も欲しくなく、癪(しゃく)も起ります。

 お初の、尾上の癪への按摩(あんま)の件には、色めいた「色メキ」のメリヤス(床メリ、床の合方)が。

 岩藤に草履で打たれ、恥辱を受けた中老・尾上が、死を決意して書置きを書くシグサには、「摘み残す・・」のメリヤス。「冷泉」の思い詰めた扱いです。

 ・・ちなみに、《メリヤス》とは、「はきごころよい めりやすの足袋(たび)」から来た、台詞やシグサに合わせて演奏される義太夫節や竹本の曲種です。

 余談ですが、昭和50年代の道頓堀・朝日座の舞台DVDで観た、四代目竹本越路太夫(三味線・竹澤弥七)、人形は、初代玉男、二代目勘十郎、若かりし簑助、玉女で、素晴らしい舞台でした。

 越路太夫は、出だしの「テモおそろしい たくみごと・・」からは、素人が考え及ばぬ、脂汗の出る難曲と述べていました。
 そのところ、私は、床の竹本千歳太夫と、三味線・豊竹富助をじっと見つめていました。

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)

 ところで、その前段は、期待の、
草履打の段
です。
 瞳孔が開くような明るい花見の舞台です。これは、歌舞伎化の薄い、原作本意の、いわゆる「人形根元のもの」、「人形根生えのもの」の舞台です。
 花見の場、外での草履打ち、という原作どおりの趣向です。外で、花見の下では、女の喧嘩になってしまうと考えての室内の陰険な芝居にはしていません。

 ちなみに、岩藤には女ですが、人形にしっかり足があります。

しかし、どうも、
お藤・竹本津駒太夫
尾上・豊竹睦太夫
は、やや期待はずれ。あくまで、私の、主観です。
 まるで、吉良上野介義央のような声。
三味線は、鶴澤寛治なんですが。

 さらに、その前の、
筑摩川の段
も、なぜか、やや期待はずれ。太夫の声が今一つで聞きずらい。これも、私の、主観です。人それぞれ。

 飛び、飛び、になりますが、
又助住家の段

中)豊竹咲甫太夫(三味線・鶴澤清志郎)
奥)豊竹呂勢太夫(三味線・竹澤宗助)
 この二人の競った舞台は、期待どおり、素晴らしかった。私は、この二人のファンです。成長が楽しみ。
 今回は、呂勢太夫の迫力に圧倒されました。

廊下の段
再びの、豊竹咲甫太夫(三味線・竹澤団七)
も、やはり、素晴らしい。
 余談ですが、咲甫太夫は、六代目竹本織太夫を襲名するとか。

クライマックスの、
奥庭の段
は、動きのドラマで魅せます。
人形・桐竹勘十郎、三味線・野澤喜一郎が良い。

その人形ですが、
尾上・吉田和生
お初・桐竹勘十郎
岩藤・吉田玉男

今回は、
さきの桐竹勘十郎が傑出していました。
 私が、十年ほど前、ほとんど予備知識なく、文楽の舞台を初めて観た時、ずっと、桐竹勘十郎に目が行って、印象に残った思い出があります。やはり、それなりの実力は、予備知識のない者も引きつけるんだ、今になって、とつくずく思っています。
 ただ、この日、桐竹勘十郎の登場で万雷の拍手でしたが、熱演の太夫に迷惑だし、こっちも、浄瑠璃を聞いているんですから、劇中での、単に登場だけへの拍手は、止めてもらいたいものです。

 ひさしぶりに楽しめました。やはり、屈指の難曲でした。
 しかし、名人級が、高齢で、ごっそり欠けた文楽の舞台は、なんとなく、寂しいですね。それで、《(よりどり)みどり》公演では、戯曲も楽しめず、ちっと、観劇への腰が重くなる近頃です。

 ・・それから、一つ。東京では、文楽も、歌舞伎も、出し物の「上演資料集」を販売していますので、パンフレットだけでなく、是非、買ってくださいね。毎公演買って、10年もたてば、〈一財産〉になります。
 先日、初心者の方のブログを見ていたら、プログラムのことだけで、このことが抜けていたようでしたので、あえて書かせていただきます。
 ただ、近時の資料集は、大半のページが、過去の上演記録で、論文などが少ないのは、やや、困りモノです。★

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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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