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千歳大夫、近松義太夫の原点を熱演 ~ 国立劇場・文楽公演『国性爺合戦』 

 意外に暖かく感じたこの日、梅も咲きはじめた国立劇場に。【写真は、ワン・クリックで拡大できます。】

 今回は、近松門左衛門の、千古不滅の名作です。
 3部制の「(よりどり)見取り」の公演の夜の部。2段目ダイジェストと3段目だけなので、戯曲本体よりも、義太夫の音、とりわけ、大和風、西風、さらには、彦六系、文楽系といった曲風に留意して、舞台に集中することにしました。
 また、3部に分かれていることから、特に、夜の部では、太夫も、人形も、「超」ベテランを欠く配役ですが、いかに、江戸の、近松、竹本座の、いわば古典の伝統を承継した芸を見せるか、それを、私がファンの、呂勢大夫 vs 千歳大夫 vs 咲甫大夫、揃い踏みで、今後の文楽への地平が見えるかの期待が、今回の舞台の鑑賞ポイントでしょう。

以下、「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。


 16日(月)国立劇場、2月文楽公演・第3部(18時から21時)、

近松門左衛門『国性爺合戦(こくせんやがっせん)』

の鑑賞です。
 席は、このところ〈人形重視〉で、1列目中央床寄り。 文楽では、オペラと違ってオーケストラ・ピットが無くてすぐ前が舞台なので、上手が遠いし、後ろを見なければ太夫の「」が見えないのであまり良い席とは言えません。でも、前に人の気配が無く、足も伸ばせるので、しかも、この日は角(かど)で、お隣も空席なので、ゆったり鑑賞できるのは何物にも代えられません。

 さて、近松門左衛門、63歳の、五段浄瑠璃(1715年)の本作は、3年越し17か月にわたる、古今希有の、連日大入りのロングラン公演となった名作です。
 くどいですが、今回の上演は、第2段の一部と第3段です。

 すでに、〈予習〉に書きましたが、竹本義太夫が1714年に亡くなり、指名された跡継ぎが、24歳、経験2年の、能力はあるが、実績のない、声も低いと言われた、竹田政太夫(1691ー1744)でした。

 しかし、政太夫は、近松が応援する気持ちで書いた本作を、連日、3段目切り、を務め、大成功、実績を作りました。これを、舞台でどう引き継げるか。そこがポイントです。
(余談ですが、この時代は、固有名詞でも「大夫」では無く「太夫」です。念のため。そのあたりは、国立劇場付属の「伝統芸能情報館」で、今、催されている展示でも説明されています。写真は、そこでの展示の床本と木版。)


 舞台、冒頭、千里が竹虎狩りの段(野澤松之助の改曲によります。本来の、近松の原曲によって聴きたいものですが)では、大きな虎が(もちろん人形です)登場して、最前列で、前に迫り出して来られると、これが結構、迫力があって、怖い !? キャーと言う、若い女性でなくて残念でしたネ。
 ところで、気になっちゃったんです。一人遣い人形の兵の頭のかぶりものが下がって〈目隠し〉のようになっているの、気がつかないかなあ。

 ま、この冒頭とラスト・「紅流しより獅子が城の段」は、派手に観客受けするところですが、やはり眼目は「楼門」と「甘輝館」です。
 それはそうとそのラスト、後、ですが、豊竹咲甫大夫(三味線・竹澤宗助)が熱演。一段と、声が良いですね。

 ところで、余談ですが、この後、次の、「楼門」への数分の舞台転換で、幕内から、「せーの」・ドスン‼、「せーの」・ドン‼・「はーい」、といやに派手に、元気な声が聞こえます。重そー。でも、こんなに聞こえるのは、ちょっと考えたほうがよいかも。


楼門の段。大和風の優美、情趣深い曲風を、豊竹呂勢大夫(三味線・鶴澤清治)が、熱演しました。
 錦祥女の、20歳で、3千余里彼方の東の果ての父への慕情をうたいあげます。

休憩後・・この日期待の、甘輝館の段
西風の低い、低音主体の音遣い、まさに、現行義太夫の原点を、竹本千歳大夫(三味線・豊澤富助)が、マクラの地味な状況描写から熱演して見事です。
伝統継承に一安心。

が、この日、私はどうも、人形が・・、
老一官妻・桐竹勘壽
錦祥女・豊竹清十郎
和藤内・吉田玉志
五常軍甘輝・吉田玉女
・・が、玉女をのぞいて、今一つ感動が薄い。

 それに、細かいリアリズムなのですが、五常軍甘輝が錦祥女を切ろうと刃を出したところで、錦祥女がなぜか、一テンポ遅れて知らぬ顔みたいな動き・・。

 和藤内も、例えば、赤い流れを見て、いざ、城内に駆ける・・テンションのあがるところで、人形遣いが足下に注意して、慎重に橋をおりるものだから迫力が無い(気持ちは、わかるんですが、高齢の文雀さんだって、近時は、お尻をひょいと押してもらって敏捷に動いています。)。

 ま、そんな細かいあら探しは兎も角、なぜか、総体に、華がないように、私は、感じてしまったのです。

 これは、もう、全くの余談ですが、五常軍甘輝だったかな、左遣いの黒衣装の方、すごく体格が大きいか肥満傾向ですね。珍しいのですが、余計なこと。

 さて、繰り返しになりますが、この作品は、竹本座の人形浄瑠璃舞台芸の蓄積のうえに、近松の新傾向の魅力など、まさに、竹本座の総力を結集した感のある名作なので、全段通しで聴きたいものです。
 それが、今回の国立劇場のように、3部構成の「(よりどり)みどり」公演にするから、人材も、散らされ、上記のような感想も出てしまうのでしょうか。

 文楽初見の人は兎も角、壮大な戯曲世界を楽しみたい、永年の文楽ファンの足を遠ざけ、腰を上げにくくしていくのでは、と心配してしまいます。


 最後に、この際、もう一つ。

 書籍の話ですが、文楽世界を舞台にした、松浦千恵美『しだれ桜恋心中』を新年に読みました。
 「アガサ・クリスティー賞受賞」、とありますが、全く理解できません。文楽世界を舞台に使っただけのようなもので、また、本質に、文楽への愛情というものが感じられません。あくまで、素人の、私の感想ですのであしからず。
 もっと驚いたのは、この本を、ブログで紹介している技芸員の方がいたこと。きっと、読む前にアップされたんでしょうが。今日は、機嫌が悪いわけではないんですが。

 今週は、次、オペラ『リゴレット』のプレミアに参ります。★

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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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