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破滅に駆ける長五郎、愛に駆ける吾妻、家族の光芒。「橋本」の嶋大夫、「引窓」の咲大夫、怒濤の熱演  ~ 文楽『双蝶々曲輪日記』に感動しました。

 まずは、余談ですが、昨夜、遅くまで、

石井光太 『浮浪児1945ー戦争が生んだ子供たち』(新潮社)

を読んでいたら、今朝は、心が重苦しい感じ。

 さて、16日(火)、東京・国立劇場で、文楽公演(第1部)、


双蝶々曲輪日記
(ふたつちょうちょうくるわにっき)

を聴きました。
 
 充実した公演でした。ここまでするなら、通し、ですれば良いのに。
 残念ですが、今回は、9段の通しでは無く、2段「堀江相撲場(角力場)」、4段「大宝寺町米屋」、5段「難波裏喧嘩」、6段「橋本」、8段「八幡里引窓」の段の半通し公演です。

 この9月公演は、朝、昼、晩と3部の、「(より取り)見取り(勝手次第)」的な・・嫌みな言い方ですが・・3部公演ですが、聴くなら、やはり、個人的には、第1部『双蝶々曲輪日記』、と最初から思っていました。

 聞き所満載ですし、太夫、三味線、人形のラインアップも(ただし、三味線の鶴澤寛治は、病気休演)私の趣味ですし、それに、10月は、歌舞伎でも、国立劇場で見られ比較できます。

 何と言っても、『双蝶々曲輪日記』は、1749年(寛永2年)7月25日、竹本座初演の、作者は、竹田出雲、三好松洛、並木千柳という、「忠臣蔵」「手習鑑」「千本桜」の、最高合作トリオの作品です。


 本公演は、大きく言うと、長五郎を中心として、もう一つ吾妻を囲む人々の、いわば2つの人生模様が中心となって、分かりやすくなっています。
 特に、ほとんどは、長五郎の人生模様です。

 前半、2、4、5段、約90分では、得意絶頂にある侠客・力士の長五郎の人生が、長吉との兄弟分となるエピソードを中心に、青春物語の如く、それがスピーディに、面白く描かれます。

 名題にある「蝶々」とは、長五郎と長吉をモジっています。第7幕に「・・やあ長五郎か、こりゃ長五郎、われも長、二人合わせて蝶々とまれ・・」、とあります。


 4段、豊竹希大夫(三味線・鶴澤清丈)の若いコンビの力強さが印象に残りました。
 全くの余談ですが、はじめ、太夫が、床本を捧げる様(さま)に、やや威厳が欠けるような感じを受けたのですが。

 切、の
 竹本津駒大夫の三味線、鶴澤寛治休演で、文楽では《新人》と言える、鶴澤寛太郎が、大指揮者の代わりに、急遽、新人指揮者が代演したようなもの。でも、期待が大きいからでしょうね。

人形、
長五郎・吉田玉也
長吉・吉田幸輔
も魅力的でした。

 舞台は、いきなり「角力場」ですから、素人浄瑠璃人口の少ない現在、大多数の観客は、与五郎、与兵衛を中心とした人物関係は、予め《予習》しておく必要があります。
 もっとも、巧みに、それまでの経緯・説明を台詞に取り込んでいましたから、注意深く聴いていればそれなりに理解しやすく、親切に、出来ています。

 総じて、享保8、9年頃に処刑された、《力士・荒石長五郎》の侍殺しを書いた、西沢一風・田中千柳、作、「昔米万石通(むかしごめまんごくどおし)」(1735年・享保10年、豊竹座)を粉本にしている部分です。


 25分の休憩後は、中身の濃い、怒濤の熱演です。


 まず、聞き所の多い、それでいてカットされることがある「橋本」が上演されました。昼食後、にコレは、ちょっとキツいものがありますが。

豊竹嶋大夫(三味線・野澤錦糸)

の大熱演。今回、特に、極端なほど、見台を覆うがごとき背を丸めての熱演です。

人形は、
駕籠かき甚兵衛・桐竹勘十郎
与次兵衛・桐竹勘壽
橋本治部右衛門・吉田玉女
の、親たちの情のこもった論争、

お照・吉田一輔
吾妻・豊松清十郎
らの恩情深い、名演。

 10分休憩して、
 次は、いよいよ、クライマックス、「引窓」です。


まずは、実力派若手、豊竹呂勢大夫(三味線・鶴澤清友)の後、
 待ってました・・・、切り、

 豊竹咲大夫(三味線・鶴澤燕三)

一段と、すばらしい。

人形も、

長五郎・吉田玉也、をめぐって、

長五郎母・桐竹紋壽
おはや(都)・吉田簑助
南方十次兵衛(与兵衛)・吉田和生

の布陣。
 しかし、毎回言いますが、吉田簑助人形、なんと女っぽいのでしょうか。まったく、見とれてしまいますよ。

 ところで、「引窓」で、照明をイジるのかと思った。もう少し工夫できなかったのでしょうか。ここは、ちょっと、予想外でした。

このブログでの、全段解説は、

http://kandoujin.blog48.fc2.com/blog-entry-526.html

を、ワンク・リックしてください。

 最後、もう一度、余談になりますが、「見取り」。いつも、通し、と比較して非難めいた言い方をしていますが、(これは、人気のあるサワリを上演するものですが)、歴史的には、素人浄瑠璃稽古人口増や、それに伴う18世紀半ばからの抜本(ぬきほん。五行本、六行本とも。なお、「丸本」は、一作品全てを収録したもので、抜本は寛延年間以前にはありませんでした。)の流行によって、素人の浄瑠璃が学びやすくなったことも影響されているとか。
 勿論、近・現代は、営業政策が大きいでしょうが。
(神田由築「江戸の浄瑠璃文化」(山川出版社)88-93頁参考)


 今週末は、日生劇場の、「シンポジウム ロルカ」を聴講します。★

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Re: タイトルなし

こんにちは。良かったですねー。
私たちは、楽しめればいいのですが、A新聞の内山美樹子先生の批評は、結構、手厳しいところもありましたね。

こんにちは。
先日はコメントありがとうございました。

見ごたえ聞きごたえのある公演でしたね。
初めて観たので私も思わず前のめりそうになりました。
大夫の熱演、どの回もありったけの情熱と想いをこめて語ってらっしゃるんですね。

プロフィール

感動人

Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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