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5月文楽公演・第1部、「増補忠臣蔵」、「恋女房染分手綱」、「三十三間堂棟由来」を予習します。

 2回にわたって、東京・国立劇場、5月文楽公演(10日から26日)の「予習」をします。
 予約開始は、4月7日(月)です。

 公演は、「(観客に親しみやすい出し物の、よりどり)みどり」公演ですが、「沓掛」が、住大夫さん引退公演となりますので、チケット争奪が激しいと思われます。ただ、前後、「本下」と「柳」の選曲は、やや腕組みしてしまうところもありますが、それは、まず、観劇して、感ずるところを大切にして。

 まずは、第一部からです・・・・。

増補忠臣蔵~本蔵下屋敷の段

 「本下」とも。一幕の時代物で、〈別邸茶の湯座敷の場〉と〈同奥庭出立の場〉からなります。「仮名手本忠臣蔵」九段目の口ともいえる部分で、作者、初演不明です。

 一説では、1878年(明治11年)大江橋席で「仮名手本忠臣蔵」通しの一段として上演されたとか、1892年(明治25年)大阪彦六座で「増補忠臣蔵」として上演された、とも言われます。

 本蔵の行為【後述参考】によって、「へつらい武士」との汚名を受けている主君・若狭之助への責任から蟄居(ちっきょ)している本蔵の本心を見破った若狭之助は暇を与えます。

 妹・三千歳姫と本蔵が、琴と尺八を合奏して、別れを告げます。
 若狭之助は、本蔵に、師直(もろのう)の屋敷の地図を与えます。本蔵は、改めて主君に感謝し、側近の企む毒殺計画をあかして、山科への旅に出ます。

【参考】「仮名手本忠臣蔵」の該当段です。
・・・
2段目(桃井館の段)
 桃井若狭之助安近宅に、塩治(判官)高貞の使い、大星由良助義兼の子息・大星力弥が来ました。大星力弥と桃井家家老・加古川本蔵の娘・小浪とは許嫁です。

 用件は、「高師直から、明日早朝4時には、若狭之助安近と塩治(判官)高貞の両人は、来客が多いことが予想されるので、登城し、直義公御前に待機せよ」とのこと。

 深夜0時。桃井若狭之助安近は、刀の手入れをしています。やがて、桃井家家老・加古川本蔵をよび、いままで、師直の無礼を堪えてきた怒りも限界、明日、師直を切るという心底を打ち明けます。

 反対すると思った加古川本蔵は、
「町人の処世術のように、冬は日かげ、夏は日なたを歩けば人に行き当たることなく無難だが、除(よけ)て通せばほうず(限度)がない、」と、
傍らの脇差しで、盆栽の松の枝をすっぱり切り【松切り】、
「かくのごとくすっぱりおやりなされませ。」と言い、
「今は、まだ0時、(大事の前)ゆっくりお休みなせらせ。」と言います。

 桃井若狭之助安近は、「聞き入れれてくれて満足した、・・もう二度とあわぬぞぞ。」と奥に入って行きました。

 殿の姿が見えなくなると、お家の一大事と、加古川本蔵は、家来を引き連れて、師直屋敷に馬を走らせようとします。
 実は、高(武蔵守)師直への、「進物目録」を持って行きます。

3段目(鎌倉御所【実際は、松の廊下のある江戸城】の段)
 朝4時。足利(左兵衛督)直義が、関東8か国の管領として、新たに建てた御殿に、正装した客人などが入って行きます。

 加古川本蔵は、御所で、家来の鷺(さぎ)坂伴内が付き従う、師直に追いつき、式作法指導に対する礼として、大量の反物や大判金などの進物(賄賂)を進呈し(裏面工作し)ます。高(武蔵守)師直は、遺恨を晴らしに来たと思ったのが拍子抜けで、いたって上機嫌になります。

 さらに、長廊下(歌舞伎では「松の廊下」)判官刀傷の際、居合わせて引き留めることになり、恨みを買うことになります。


恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたずな)~沓掛村の段、坂の下の段)」

 人間国宝・住大夫さん引退の舞台になります。
 
 13段の時代物で、三好松洛、吉田冠子合作で、宝歴元年(1751年)2月に、大阪・竹本座で初演されました。
 近松門左衛門『丹波与作待夜(まつよ)の小室節(こむろぶし)』の改作です。

 今回は、第六段ですが、ここに至る筋を含めて説明してみます。

第一段
 丹波の国、由留木(ゆるぎ)家の、若殿・右馬之助は、京の東山で、遊興にふけり、恋人である祇園の芸子・いろは、の身請けを、家老の子息、御物頭(おものがしら)・伊達与作(だてよさく)に命じています。
(ところで、芸子・いろは、は、実は、与作に惚れていますが、若殿は、知りません。)

 一方、伊達与作は、腰元・重の井との不義をして、子までなしたことが、鷲塚官大夫に見つかりました。
 不義は、お家の御法度。与作は永のお暇、重の井は斬罪と決まりました。生まれた子・与之助は、与作の忠僕・一平の母・おさんに預けられました。

第二段
 与作は、芸子・いろは、の身請け金300両を、一平に命じて国許から取り寄せますが、家中の鷲塚八平次が、自分の遊興費の穴埋めのために、四条河原の乞食頭・江戸兵衛【後、石部の八蔵】に手伝わせてそれを奪い、罪を与作に着せます。

第三段
 帰国した与作は、鷲塚八平次の兄・官太夫によって、、300両の紛失を糾弾されるのですが、執権・鷲坂左内によって、犯人が鷲塚八平次と見破られ、兄・官太夫は立場上、八平次を追放します【この八平次は、第七段で、追い剥ぎで出てきます。】。
 しかし、与作も、責めを負って父から勘当を受けます。

第四段 
 重の井は、横恋慕している官太夫から、不義の罪を許すから、自分に「従え」と言われましたが、これをはねつけて、「罪」に服そうとします。

第五段
 一方、重の井の父である能役者・竹本定之進は、娘の罪ゆえに、自らも職を辞することとしますが、最後に、主君から望まれている「道成寺」を舞わせてほしいと願います。
 父は、死罪となる娘・重の井をワキに、殿・由留木左衛門の御前で、「道成寺」を舞い、鐘の中で切腹し、娘の命乞いをします。

 親心に感じ入った主君に許された重の井は、生まれたばかりの息女・調姫(しらべひめ)の乳人を命じられます。


・・・ここからが、今回の上演部分です。

第六段

 一平は八蔵と名乗って、故郷・沓掛村で、馬方となり、極貧のうちに、母・おさんと5歳になった三吉と名乗った与之助を養っています。
 座頭・慶政は、追い剥ぎに追われたのを一平に助けられ、家に泊められ、この親子の会話を聞いて同情し、官金(官位を得るための金)の300両をこっそり置いて出発します。八蔵は、それを見つけて追いかけます。

第七段

 慶政は、与作の異母兄でした。追い剥ぎに襲われ、深手を負った慶政は、300両を与作に届けるように一平に頼みます。
 追い剥ぎは、八平次でした。一平は討って、主人の恨みを果たし、沓掛村に帰ります。


三十三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのうらい~平太郎住家の段

 「祇園女御九重錦」とも。時代物五段で、初演は1760年(宝歴10年)12月豊竹座ですが、三段目「平太郎住家の段」だけがしばしば上演されています。それ以前に上演されていたときの時代設定を、後白河時代から白河時代に移しています。

 説経節的輪廻物語を捨てて、くどきや木遣りを見せる趣向になっていて、「葛の葉子別れ」と同趣向の、木遣り音頭の美しい旋律での、柳の精のお柳(りゅう)と夫・横曽根平太郎、息子・緑丸の夢幻的な別れの場面が見所です。


 お柳(りゅう)は、茶屋を営んでいた時に、盗賊・和田四郎(源義親の郎頭・鹿島三郎義連)に言い寄られてはねつけました。
 そのお柳は、実は、柳の精で、かつて、太宰師・藤原季仲が鷹狩りをしていたおりに、鷹の縄が柳の枝にからまって、季仲が柳を切り倒そうとしたときに、たまたま、母親と通りかかった横曽根平太郎が、矢で鷹の縄を切り、鷹と柳を助けました。
 実は、その時に、季仲一行の中に、平太郎母子の敵・時澄がいたのですが、平太郎は、多勢のなかで敗れると母一人となることを危惧して敵討ちをしませんでした。
 母子のこの会話を聞いたお柳は、二人を自分の庵で休ませ、平太郎に女房にしてくれるよに頼み、母の杯で夫婦になったのでした。

 その後、白河法皇と祇園女御が環御するところを、盗賊・和田四郎(源義親の郎頭・鹿島三郎義連)らに襲われたところを、平太郎、お柳は助けます。
 和田四郎は、武者・時澄の教唆で、50両で、白河法皇を捕らえ、祇園女御を奪い、季仲の恋を成就し、そわせる企てでした。
 

 白河法皇は、実は、熊野権現の百度の大願成就の百度目の時に、柳の祟りで谷に落ち、柳の梢で貫かれて死んだ蓮華王坊の生まれ変わりですが、この前世のドクロが柳に付いているために頭痛から逃れられない、その柳を切って都に三十三間の御堂を建設すれば平癒するとの熊野権現の霊夢を得たことから、柳を切る院宣を備前守・忠盛〈平忠盛〉に出します。

 忠守から命を受けた執権蔵人・家貞は、熊野に着いて、柳を切る人夫を集めにかかります。

 熊野で、盗賊・和田四郎は、通りかかった相撲取り・入船風之助を襲いますが、逆に投げ飛ばされます。

 平太郎は、鳥目になっていて、子、緑丸に手を引かれて、畑の作物を盗もうとしますが、月に恥じて後悔します。それを見ていた和田四郎が脅します。
 
 蔵人が、お柳を訪ねて、5年前に白河法皇を助けた褒美の金を仏壇に手向け、また、柳の木を切る話をします。

 平太郎が戻って来ますが、そこに和田四郎がやってきて、平四郎の畑での盗みを訴えると脅して、お柳を連れ去ろうとしますが、平太郎の母が先ほどの蔵人からの金子を渡して追い払います。
 お柳は、別れのつらさを訴えるのですが、平太郎は寝入ってしまいます。

 柳の木を切る音がすると、お柳の体も痛みます。
 お柳は、眠る夫に自分は柳の精であると別れを告げます。
 平太郎が目覚めて、柳の葉が散る中、母と後を追います。緑丸も追います。
 緑丸の母を慕う声にひかれて現れたお柳は、ドクロを平太郎に渡して、これを手柄に出世を言い、姿を消します。
 雪の中、鳥目の平太郎は、緑丸に手を引かれて、柳の元に行こうとします。

 平太郎たちが出ていった家に残る母のもとに、和田四郎が来て、ドクロを見つけて、その秘密を母親から聞き出そうと痛めつけます。
 平太郎が戻り、母を介抱しますが、母は息絶えます。和田は、緑丸を人質に取って、ドクロが白河法皇の前世である秘密を聞き出し、斬ろうとしますが、その時、鳥の羽音がして、平太郎の目があき、和田を斬ります。
 お柳の熊野権現の加護であるとの声がし、平太郎が懐から出した白紙の誓紙が、鳥の戻った牛王誓紙になります。

 
 街道を人夫たちが柳を引いていますが、動かなくなります。平太郎が緑丸に綱を引かせます。平太郎は木遣り歌を歌います。緑丸は母を呼び叫びます。
 木遣り歌と緑丸の泣声の中、柳は動きます。

(その後:法皇と平太郎は、夢を通じて、お柳は楊柳観音だったこと、やがて生まれる親鸞上人の弟子に、緑丸が平太郎を襲名してなれば、真仏房と尊敬されるであろうこと、を知ります。法皇の病は平癒し、季仲は捕らえられ、時澄を平太郎、緑丸は討ちます。

 なお、祇園女御は、白河法皇から忠盛〈平忠盛〉に下げ与えられ、子を生みますが、それが清盛〈平清盛〉という設定です。季仲、義親、義家は、源氏【「源平盛衰記」巻26など参照】。
 本上演に関係ありませんが、忠盛の妻・池殿御前は、女御暗殺を企てますが、蔵人の妻・若倉らに阻まれて失敗して死し、池殿の名は女御に譲られます。))

参考:「上演資料集(343)」(国立劇場芸能調査室)、「上演資料集(494)」(国立劇場調査資料課)、「上演資料集(539)」(国立劇場調査記録課)、内山美樹子「文楽二十世紀後期の輝き」(早稲田大学出版部)



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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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