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今年、キラリと光る名公演。楽しさあふれる、演劇×オペラ&多国籍コラボが、一つのあり方を提示して大成功~北とぴあ。音楽付きコメディ『病は気から』を楽しみました。

 毎年行く、東京北区「北(ほく)とぴあ」の「さくらホール」での、「北とぴあ国際音楽祭」。

 まだ、頭の中には、先日の10時間の人形浄瑠璃の音が残っています。
 ところが、今年の「さくらホール」の出し物は、インパクトが強く、たちまち、頭の中が、バロック音楽で占められました。

 今年鑑賞したオペラで、『メデア』や『パルジファル』も印象に残りましたが、この日、鑑賞した、

音楽付きコメディ『病は気から』、

プレミエは、まさにキラリと光る粋な舞台でした。

 それに、座席での音響が実に良く響きました(6列目センター下手寄り)。
 ちなみに、字幕は、大阪の国立文楽劇場のような中央上部表示で、演奏会形式としては、見やすくマッチしています。
 そう言えば、料金も、ほぼ文楽と同じで、しかも、こちらは、パンフレット付きの、オペラとしては格安料金(S席6,000円)です。

 このところ、音楽界も、一般的に予算の制約が厳しい中で、この公演は、良識ある、新たな創造として、一つの「あり方」を提示したのではないでしょうか。


 観るまでは、静岡芸術劇場で10月下旬に上演された、SPACの喜劇をどのように発展させるのかな、とか、
出演者に、なぜ、こんなに国籍の違う外国人を集めたのかな、とか、
モリエールの芝居を演奏会形式で面白いかな、とか、
幕間劇はきちんと上演されるのかな、とか、
いろいろ余計な心配をしていましたが、この心配、すべて帳消しの大成功の舞台をみた感じです。


モリエール(1622ー1673)原作で、
マルカントワーヌ・シャルパンティエ(1643ー1704)作曲の、
本来は、「コメディ・バレー(舞踏喜劇)」作品を、バレー抜きの、「セミ・ステージ方式(演奏会形式)」での、歌詞は言語、台詞は日本語の上演です。

 たしかに、「セミ・ステージ方式(演奏会形式)」ではありますが、役者にあれだけ楽しい動きがあれば、そんなことは、忘れてしまいます。
 あれは、あれで、一つの舞台劇だとも言えます。


 余談になりますが、モリエール劇団の役者、ラ・グランジュが書いた劇団の「帳簿」には、モリエール死後の再上演に、「公演費用がかさみ、2400リーブルにものぼった・・」とか、「まだ1000リーブル以上が未払いのまま・・」(『モリエール全集』(臨川書店)第10巻173ページ)、とか言っていますが、そのように費用のかかる舞台を、このような工夫(創意)で、きちんと、
「プロローグ」、「第一幕間劇」、「第二幕間劇」、「第三幕間劇」、
さらには、第2幕第5場の「小さな即興オペラ」、を巧く収めて上演した舞台は見事と言えます。


 もともと、「プロローグ」は、
王・ルイ14世に捧げた音楽ですし(目的は達成されなかったようですが)、
各「幕間劇」は、
ストーリーとストレートには関係の無いものだったのです(ですから、例えば、岩波文庫版では幕間劇は省略されて翻訳されています)。


 しかし、1986年にシャルパンティエの楽譜が発見されたり、その楽譜の出版や、1990年のクリスティやミンコフスキの上演から幕間劇が再評価されたことが影響されているのか、この舞台でも、幕間劇が、想像力とセンスで、それなりに計算されて、生き生きと繋がっています。

 
 プロローグでは、「医大合格 留医予備校」、
という大きな表示板があり、その前の4列各7人の座席(椅子)でテーマを暗示した演技がされます。

 途中、気づかぬ観客の為にか、「留医」が「ルイ」ということを、表示板を音楽に合わせて動かして気づかせてくれます。

 そしてこれは、第三幕間の、医学校の卒業式に繋がっています。

 この劇の根底にあるテーマと言われる、モリエールの医学界批判も、「批判」というしかめつらしいことより、関西弁でいう「おちょくった」感じ満載のノリの良さでした。


 バレーは、入りませんが、第二幕間では、原作では、ムーア人と猿のアントレ・ド・バレーを、赤いドレスの女性がなまめかしく動きます。

 ちなみに、第一幕間は、原作ではコメディア・デラルテ風喜劇ですが、ここでは、夜警のセレナーデに、指揮者の寺神戸さんもヴァイオリンを弾きます。
 この寺神戸さん、それどころか、あちらこちらでコメデアンぶりを発揮、最後は、付け髭姿の役者ぶりです。


 さて、この公演は、

東京都北区文化振興財団が制作し、

指揮を、バロック・ヴァイオリンの寺神戸亮

ステージングを、宮城聡(SPACー静岡県舞台芸術センター芸術総監督)

潤色をノゾエ征爾(本年の岸田國士賞受賞者)

で、構成して、成功しています。

出演者も、

演劇は、SPACの演劇陣、

阿部一徳(アルガン)
牧山祐大(トット)
本田麻紀(ベリー)ら、

声楽は、日本、フランス、イタリアの《多国籍》陣容で、

マチルド・エティエンヌ(アンジなど)
エミリアーノ・ゴンザレス=トロ(ケロッグなど)
フィヴィオ・ベッティーニ(外科医など)
波多野睦美(ダフネ)
野々下由香里(ムーア人)
鈴木美紀子(クリメーヌ)ら、

管弦楽演奏は、

オリジナル古楽器を使う、寺神戸亮の手兵、
レ・ボレアード
なお、コンサート・マスターは、実力ある古楽奏者・ルイス=オッタヴィオ・サントスですが、こちらはブラジル人。
チェンバロは、上野直樹。

と、いくつもの、多重なコラボレーションで、しかも、それらを徹底的に生かして、成功しています。
 最後は、原作では、フランス語の混ざったラテン語でのパロディですが、ここでは、阿部一徳が、フランス語やイタリア語を、イタリア人やフランス人が片言の日本語で語って笑いを誘いました。

 芝居でも、日本人がやっては何となく違和感のあるジェスチャーなどは外国人が「決め」ます。そのあたりの計算が面白い。
 ベッテーニは、ここのところ毎年出演していますが、すっかり慣れて、面白さ倍増です。
 

 音楽も、小編成の古楽器オケで、オケが前にあっても、後部の声楽や役者の声が音楽に負けることはありません。逆に、プロローグでは、役者の歩き回る足音が音楽を少し邪魔したほどです。

 このように、あるべき、一つの「行き方」、「方向」を見つけて、提示したような創造的な舞台でした。
 その意味では、今年のベストに位置づけられるかもしれません。

 こうなると、さらに、来年を期待してしまいます。
 来年は、モーツアルト『フィガロの結婚』を、バロックオーケストラ(レ・ボレアード)で上演するとか。
 この有名な出し物は、通り一遍では済みません。どのように料理するか・・はて。
(公演日が、明年も23日なら、日生劇場『フィデリオ』とバッティングするので、チケット取得に気をつけなければ。「フェデリオ」は、先行予約受付ているんですよネ。)

 
 さて、少し休んで、12月には、国立劇場文楽の初日に参ります。
 そうだ、12月は、幼児の為に、サンタさんをやります。

 

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まとめ【今年、キラリと光る名】

 毎年行く、東京北区「北(ほく)とぴあ」の「さくらホール」での、「北とぴあ国際音楽祭」。 まだ、頭

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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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