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大活躍、豊竹呂勢大夫の大熱演に感動しました~11月、大阪文楽劇場公演『仮名手本忠臣蔵』タテ。至福の10時間を過ごしました。

 11月、大阪文楽劇場公演に、1泊2日で行って参りました。

 出し物は、『仮名手本忠臣蔵』。

 5年ぶりとかの、約10時間の、タテ(通し)です。舞台を観ていて、力がこもっているのが伺われました。
 このところ大阪市と補助金問題でいろいろある文楽協会が、総力を挙げた感です。
 先日の、オペラ「メデア」ではありませんが、舞台ところ狭しと太夫が並んだり、下手に太夫がいたり、御簾内を最大限使ったり、日頃見られない趣向が沢山ありました。


 『仮名手本忠臣蔵』は、やはり、完成度が高い、見ていて引き込まれる、本当に良くできた戯曲ということを再認識しました。
 昔から、必ず席が埋まる「独参湯(どくじんとう=気付の漢方薬)」とも言われるのも頷けます。

 それでも、やはり、10時間のタテを聞くとなると、ある程度きちんと「予習」して、細かい筋は勿論、見所など知っておくと楽しみが倍増します。
 それに、後述するように、《古き良き日本語》が一杯出てくるので、それも《味わいたい》ものです。

 最近の文楽公演は、時間を短縮して、有名狂言の見所だけを集めた、「(よりどり)みどり」公演が多いので、今回のような、文楽本来のタテる公演は、貴重で、見逃せませんし、これでこそ、文楽本来の良さがわかろうというものです。
 是非、年1回、このような公演をしてほしいものです。
 本当に、この公演は、良かったです。近頃、まれな、至福のひとときでした。帰宅すると、なぜか、右首が凝っていましたが。


 初めに、ちょっと余談になりますが、今回の大阪行きも、いつものように、朝9時発の、新幹線で東京を出て(「「大人の休日クラブ」で2~3割引きです。)大阪に行きました。
 ホテルに、チェック・イン出来るまで時間があったので、まずは、いつものように、好物の、大阪の《きつねうどん》と、この日は、法善寺に寄って《夫婦善哉》を食べました。
 何年か振りの《夫婦善哉》のお店でしたが、入ったときに、お店の中は、全員、中国系の若い女性ばかりだったのに驚きました。

 さて、この日は、

第2部(4時半開演。7段目から大詰まで、9時終演。)を観て、
 
 翌日に、

第1部(10時半開演。大序から6段目まで、4時終演。)を観たわけです。

 席は、一日目は、4列目・中央やや上手寄りで、二日目は、5列目上手寄りの、いずれも良い席です。(どうしたわけか、両日共、私の前の席は空席で見やすかった!)


 一日目は、まず、何といっても、
 
第二部・九段目「山科閑居の段」の、
《奥》、豊竹呂勢大夫(三味線・鶴澤清介)の大熱演に感動しました。まさに、「大当たり!」。

 豊竹呂勢大夫は、体調が悪くて休演した竹本千歳大夫の代演ですが、この至難の九段目を、「切」の豊竹嶋大夫(三味線・野澤富助)の後に、見事に聞かせました。

 この九段目は、今はどうか知りませんが、昔、この段を演ずることになると、一応辞退するのが、《礼儀》だったという慣例のある難しいところです。

 それに、初演時に、此大夫と文三郎が諍いを起こし、此大夫が竹本座を去った曰く付きの場面もあります。そこは、目をこらして聞いて、見てしまいました。

参考: 諍いについては、http://kandoujin.blog48.fc2.com/blog-entry-377.html をご覧ください。 


 やはり、この九段目は、人形も素晴らしいのです。引き込まれました。

戸無瀬の吉田和生、
娘小浪の吉田一輔、
加古川本蔵の桐竹勘十郎、

が、母と子の愛、しかも継母です。父と母子の愛、さらには、忠義を描いて抜群の筋書きが、人形達が見事に絡みます。
 まさに、それまでのポイントとなる悲劇が、ここで集約されて、あらたな局面、決起に向かう最大のクライマックスです。
 太夫、三味線、人形の三業の息があった、名舞台でした。


 さて、お話を、初めからに戻しますが、その第二部は、始まりから、見所でした。

 七段目「祇園一力茶屋の段」です。

 人形の難役です。ずんずん引き込まれました。

その人形は、
由良助の吉田玉女、
おかるの吉田簑助、
寺岡平衛門の桐竹勘十郎、

その太夫は、
由良助は、豊竹咲大夫、
おかるは、豊竹呂勢大夫、
寺岡平衛門は、豊竹英大夫、

 やはり、吉田簑助は、凄い。じっとしていても、その息遣いまで伝わって来るような、おかる人形の艶めかしいこと。もう、これは、人間以上ではないでしょうか。


 由良助(人形・吉田玉女)は、歌舞伎のように役者の恣意にならない放蕩ぶりや、平右衛門への揶揄、おかる相手の色チャリの表現が見事。文楽、人形ならではの見所でしょう。

 ところで、おもしろく、良い日本の言葉がどんどんでてきますね、例えば・・、

「人参飲んで首くくるようなもの」とは、高価な朝鮮人参を飲んで病は治ったが、費用でどうにもならなくなったこと、

「六十のむしろやぶり」とは、六十を越えた老人が、色恋に狂うこと、

「額にそのシワ伸ばし」とは、老人が、気晴らしの息抜きすること、

「大行(たいこう)は細きんを顧(かえりみ)ず」とは、大きな行いを成し遂げようとする者は、わずかな欠点など気にしないこと、

また、

 深刻に驚く仕草も、「(それだけじゃなく、まだ)おどろきの親玉がある」とか、言い方が、もう何とも言えないではありませんか。思わず笑ってしまいます。日本語って味わい深い(かった?)ですね。

 アドリブで、「日本維新の会」なども出てきましたが、こんなときの文楽では、もうちっと、ピリリと反権力的でなければ・・。

 閑話休題。話を戻して・・、

八段目「道行旅路の嫁入り」、

「世の中は、何か常なる飛鳥川、昨日の淵(ふち)ぞ 今は瀬となる」の・・・、
 「淵」は浅い所で、「瀬」は深い所。人の世の有為変転が激しいことです。(「古今集」巻18)


大詰、「花水橋引揚げの段」で、討ち入り装束で全員そろうと、なんだか、ジンとしてしまいました。こんなこと初めてだったかな。
 古い人間なんでしょうか。いや、気合いの入った名舞台のクライマックス~幕に、心底、打たれてしまったのです。
 でも、これ、きっと後述する、第1部の「塩屋判官切腹の段」を先に聞いていれば、もっと思い入れして、涙がでたかもしれません。

 余談ですが、さすが、長くて疲れたのか、隣のお嬢様、靴を脱いで、足を座席に乗っけて、私から足の裏がモロ見えのお行儀の悪さでした。簑助さんの人形を見習わなくっちゃ~。


さて、二日目です

 10時半から4時までの第一部です。
 劇場に行くと、窓口では、当日売りを買う長い行列が出来ていました。

 「吉田文雀休演」。ありゃー。
代役は、吉田和生など。

 この日の人形は、3段目まで、出遣いなしでした。
 これは、これで、なかなか良いものです。このところ、いやに出遣いが多いのも気になっていました。出遣いは、それなりにきちんと「計算」しなくては。


 こちらも、やはり、豊竹呂勢大夫の6段目「身売りの段」が良かったのですが、やはり、その前に、
「塩屋判官切腹の段」の「切」、豊竹咲大夫は、見事でした。お隣の席の、関東人らしいお嬢さん、涙が止まらない風。

 それに、続く「城明け渡しの段」がうまく連続して、舞台装置と相まち、哀愁漂って、家臣一人ひとりの悲しみの心が描写されていて上手な演出です。感心しました。
 さっき述べましたが、一連のこの段を先に見ていれば、第2部のクライマックス「花水橋引揚げの段」の感動がさらに高まったかもしれません。

 余談ですが、「切腹」と「城明け渡し」の中間で、2人の客が入場してきました。
 ま、昔の芝居小屋などでは、ここは、「通さん場」といって、こんな事はしなかったそうなんですが(松井今朝子さんの小説にもよく出てきます。)、いまは、どうでもいい時代なんでしょうか。

 きっと、フロア職員も、迷って、太夫が引っ込んだ、この「中間」を狙って座席に案内したのでしょうが、実は、この場面は、三味線の音で、静かに余韻に浸る重要な舞台なんです。


 第1部の初めに戻ってお話ししましょう。

大序(鶴が岡兜改めの段)は、能の名乗り笛のように、厳かに始まります。10時間の重厚な始まりです。

 しかし、昔は(つまり、初演時は)、ここで名太夫・竹本此太夫や、《天下の三味線弾き》団平(「大序で生まれて、大序で死んだ」と言われたほどです。)、人形の吉田文三郎が活躍し、そこの舞台を歌舞伎で真似たと言われたほどですが、今は、若手の出番になりました。このようなところが、文楽衰退の一因に挙げる人もいます。
 それに、高師の顔世御前への《セクハラ》もそんなに描写されずあっけなく、その後も、2段目まで、淡々と終わってしまいます。ちょっと惜しいかな。
  

 三段目「殿中刃傷の段」、竹本津駒大夫の憎々しい、師直は、さすが。
 悪口のあとのグロテスクな笑いに拍手が沸きます。記録では、「64回笑った」太夫もいたそうですが、この時、何回かな、と指で数えていました。
 
 また、「鮒侍」と「侍」を付けたりするのは、歌舞伎の台詞。歌舞伎が大きく影響しています。


四段目。
(花籠の段)
 「花献上」至難。単に花をならべてブツブツの前半1/ 3。

 
 ここだけではありませんが、気づくのが舞台の広さでの空白の多さです。

 戻りますが、「大序」でも、歌舞伎と異なり、
二重上は、判官、直義、師直
平舞台が、上手に若狭之助のみで、後で、顔世が登場します。

 舞台が広くて、空間が気になるところと、重厚に感じるところ、両方あります。空間が気になるところは、工夫の余地があるかもしれません。


五段目「山崎街道」の場面は、6月29日夜の設定。
 暗黒の、独特の雰囲気で良い舞台でした。歌舞伎の仲蔵を想像する、なかなか迫力ある舞台でした。「二つ玉の段」、豊竹松香大夫(三味線・竹澤団七)は、聞かせました。見事でした。

六段目「身売りの段」の場面は、続く6月30日朝の設定です。ここでも、豊竹呂勢大夫が、見事。感じ入りました。


「早野勘平切腹の段」は、ずっと体調不良の竹本源大夫。襲名後からずっと、あまり良いところを聞いていません。
 この日も、第一部最後のクライマックスなのに、盛り上がらず(と、私は、感じましたが)、船をこぐ人が多くみうけられました。私も、あまり感動しませんでした。まだ、修行が足りなくて、良さが分からないのかな。

 
 さて、今回の公演、あの長さで、25分休憩で、そこで食事はちょっとキツい。最近は、歯も悪いんで。こんな、高齢者の気持ち、劇場は、わからないでしょうね。
 1日目は、1階の「文楽茶寮」で、予約した「天盛り」を慌てて食べて、開演中、胸やけしてしまったので、2日目は、朝、ホテルのバイキングをしっかり食べ、劇場では食事せず、100円の「明治」板チョコレートを食べました。これで、ばっちり。
 考えて見れば、オペラの時は、劇場では食事しないのに、文楽では、つい拘るのは、何故かな。

 至極の2日が終わりました。
 金曜日は、バロックオペラ「病は気から」を観に参ります。

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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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