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映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』 ~ サリンジャーを通底に、米国文学とマンハッタンの香りを背景に繰り広げられる、軽快でセンスに溢れた、女性の成長物語

 映画が先か、書物が先か。今回は、上映終わり近くに知って、駆けつけたので、映画が先。それは・・、

マイ・ニューヨーク・ダイアリー』(2020 アイルランド・カナダ合作)

です。

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 映画の原題どおり「サリンジャー・イヤー」(サリンジャーとの一年)か、原作訳書名どおり「サリンジャーと過ごした日々」(2015)とあれば、早くに気付いたのですが。
 原作は、作家志望の女性、ジョアンア・ラコフ(1972-)の、1995年、23歳の1年間、米国の出版エイジェンシー《ハロルド・オーバー・アソシエイツ》で、ジェローム・D・サリンジャー(1919-2010)担当を務めた時の実体験を書いた自叙伝です。と言うことは、サリンジャーは77歳か76歳。

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 出版エイジェンシーとは、著作者の版権管理をする会社で、この会社は、1929年設立で、アガサ・クリスティー、スコット・フィッツジェラルド、ウイリアム・フォークナーなど綺羅星のごとく有名作家の版権管理をしていることは、映画中にも出て来ます。
 映画の、この事務所内でのドラマのみならず、セット、備品、すべてが必見です。

 映画は、主人公・ジョアンナ(マーガレット・クアリーが好演。笑顔がずっと記憶に残ります。)と、その上司マーガレット(シガニー・ウイヴァーが好演。恋人が死んでの老け役は見事。)との仕事上のやり取りが映画の芯となっています。
 クライマックスで、夢を求めてジョアンナが、マーガレットに退職を求めるシーンは、両者とも見事な演技で感動的です。

 余談ながら、現実には、このマーガレットが、やがて、経営を引き継いだそうです。
 また、原作者ジョアンア・ラコフが、映画のエレヴェーター・ホールですれ違う女性として、カメオ出演しています。わかりましたか ? エレヴェータ前シーンは、2度ありましたが。

 サリンジャーについての映画は、2019年2月5日の、このブログで、
ライ麦畑の反逆児 ーひとりぼっちのサリンジャー」(2017)
を載せたことがありますので、ご参照ください。
 同作は、サリンジャーの全体像とその中の「ライ麦畑でつかまえて」の位置づけが、よく描かれた秀作でした。

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)

 さて、サリンジャー32歳の時の、「ライ麦畑でつかまえて」(1951。近時は、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」というほうが通っています。)に出てくるのが、主人公・ホールデン・コールフィールドで、本日の作品にも、この名が頻出しています。 
 原作を知らないと、映画に深入り出来ないかもしれません。
ライ麦畑で遊んでいる子どもたちが、崖から落ちそうになったときにつかまえてあげる、ライ麦のキャッチャー」の表現が印象深い本です。

 映画には、やはり、「ハプワース16」が出て来ます。これは、「ニューヨーカー」誌に載った短編、
このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる / ハプワース16 1924年
のことです。

 1965年(46歳)に発表した最後の作品で、面白い書名ですが、兄シーモアが米軍キャンプ地から家族に送った書簡小説風で、内容に関係ない、おかしな題名です。
 無名のオーキシーズ・プレス社が、単行本化しようとしましたが中止されています。映画に出てくるのは、出版が成功するような感じですが、違います。
 この後、サリンジャーは、45年間、ニューハンプシャン州南西部コーニッシュの11万坪(東京ドーム7.8個分くらい)の家で隠遁生活を続けます。離婚もします。

 映画の最後、ニューヨーカー誌の本社の“敷居”も低くなって、ついに、サリンジャーに対面できた、ほんの一瞬の場面(サリンジャーは後ろ向き)に、筆者は、ドン、と感動して、涙目になってしまいました。

 映画の、高級ホテルのウォルドーフ・アストリア・ホテルに流れるムーンリバーの曲をバックに「ライ麦畑でつかまえて」の初版本を見るジョアンナ、同ホテルのウエイターの何気ない一言、そして、脈絡無く始まるダンスのシーンの素晴らしさ。
 また、「ニューヨーカー」社の受付を見られるだけで、何となく感動します。
 結び、クライマックスのケイティー・ヘルツィヒの曲(「Beat of Your Own」)洒落ていて、素晴らしい。

 監督・脚本は、フィリップ・ファラルドー(1968-。カナダ)

 余談ながら、こういう現代作品は、ちょっとした英語の言い回しのフレーズが、すこぶる英語の“勉強”になるんです。

 登場する恋人の男たちは、置いていかれ、ぱっとしませんが、溌剌とした女性の、笑顔の美しい、良い映画でした。見落とさないで良かった。★
  
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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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