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秋田麻早子 『絵を見る技術』 ~ 絵に関する情報は、本・Webで得られますが、「観察」は自分しか出来ません。本書は、その「観察」と、その後、「感動を人に伝える技術」を教えてくれる良書です。

 まずは、余談。

 今日は、美術館についてです。
 コロナ禍の影響で、美術館は、どこも同じ方法で入場制限をしていて、「時間指定制」、さらに、「入場料先払い制」となっています。
 大体、常設展は、一般に、普段ガラガラ ! なのにです(国立西洋美術館の常設展だけは、広いせいもあってか、日時指定制ではありません。)

 その先払い料金を支払うためだけに、美術館毎に、〈ぴあ〉だの、〈イープラス〉など、個人情報・クレジット・カード情報などを登録して、会員にならなければなりません。
 面倒よりも、情報をいろいろな委託企業にバラまくことが心配です。

 美術館が、効率化、民間委託しか頭に無いと、自分のところだけを考えたこういう方法が最善なのでしょう。もしや、この際、面倒な発券業務を無くそうとしているのか、とも勘ぐってしまいます。
 このような時にこそ、普段ガラガラの常設展に馴染んでもらい、むしろ入場者を増やす工夫、近くの美術館に気軽に行ける工夫、会員などを作って美術好きを増やす工夫、パソコン映像・説明などから実美術館誘導する工夫などをなぜ考えてみないのでしょうか。

 本題です。
 本書を読んだら、絶対に美術館に行って絵を見たくなります。

秋田麻早子 『絵を見る技術』(朝日出版社)

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 展覧会で、絵を「見ていても観察していない」とは、痛いところを突かれました。
 では、いったい、絵をどう「観察」して行けばよいのか
 一方、素敵な絵や展覧会を見たけれど、それを上手く人に伝えられない。どうすればよいか。
 このコツを、つまりは、ビジュアル・リテラシー(絵画の表現手段である造形の見方)を本書は、伝授してくれます。
 つまり、「問いを立てながら絵を見ることを知っている」ことこそが、「見るセンスがある」ことです。

 ところで、偉そうなことを言いますが、本書で感心したのは、じゃあ、クラシックな名画ではなくて、現代絵画の場合は、どうなのか、と言った素朴な疑問にも、バーネット・ニューマン、カジミール・マレーヴィチ、ピエト・モンドリアンの特徴的な絵画を引用して説明されていることです。

 本書を読むと、早速、美術館に行って、スキーム(見るための枠組み)を立てつつ、一つの絵の前で長い間佇むこと、観察することになるでしょう。

 例えば、
 一枚の絵を前にしての観察は・・、

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)

1、まずは、絵の「フォーカル・ポイント」(焦点)、つまり、画家が一番見てほしいところを探します。
 これは、一番コントラストの強いところですから、多分、すぐ分かります。

2、次に、頭の中で、絵の中の「リーディング・ライン」(重要な箇所に目を誘導する線)を探して、目を誘導させ、経路をたどってみます。それには、入口や出口があるかもしれません。
 また、角やサイドに「ストッパー」となるものがあれば探します。
 これは、絵を理解するプロセスです。

3、構造線を頭に浮かべ引いてみます
 その時、「リニア・スキーム」(構造線とサブの線)を探します。 絵の左右に「重さによるバランス」を見つけます。「重さ」です。今まで、思ってもみませんでした。

4、本書では、途中、「絵の具」の歴史が語られます。なぜ、「油絵」、「水彩画」と言うのかは、ご存知ですよね。
 色素のメディウム(媒材)が油なのが油絵、アラビアゴムなのが水彩(水ではありません)です。因みに、膠(にかわ)なのが日本画、卵なのがテンペラ画、漆喰なのがフレスコ画で、チューブ入り油絵の具の発明は、1824年です。

5、配色を、色相(しきそう。色の種類)、彩度明度の観点から見て行きます。

 スフマート(少しずつ暗くしていく、いわゆる〈煙〉)か、対するカンジャンテか、ユニオーネかテネプリズムか。
 ここは、本書でも、奥が深いところです。
 あわせて、「補色」(青:橙、赤:緑、黄:紫)も探します。

6、いよいよ、人間で言う骨格となる「構成」の線、パターンを頭の中で引いてみます。
この部分は、本書の山場で、書き方も詳細です。図も、用語も多い。

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7、次に、「統一感」、人間で言う皮膚に当たる表面の観察です。疎・密質感などを見て行きます。
 本書でも、6と7の理解には、精読を要します。

 このように、理論的に理解したら、逆に、人に伝えるのもすこぶる容易です。

 本書の内容を理解していれば、数ある名作をすべて予習していかなくても、おおよそ絵が語れます。最後、どのくらい理解したかの《テスト》は、有益です。普通に読んでいれば、70%くらいは、分かります。

 今後、欲を言えば、美術史を知っていれば、絵の観賞は、面白くてたまらなくなるでしょう。
 素晴らしい本でした。ビジネスパースン向きの講座が元になった書籍で、難解ではありません。万人にお薦めです。うちの孫にも、早いうちに薦めたい。★
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Re: ありがとうございます

 お役にたてて光栄です。読むと、美術館に行きたくなりますねえ。

はじめまして

いつもご訪問ありがとうございます。
おもしろそうな本だなと思ったので、先週ようやく本屋さんに行ってきました。
まだ1/3程しか読めていませんが、もう美術館に行きたくなっています。
素敵な本の紹介をありがとうございます。

Re: ありがとうございます

 恐縮ですが、お考えになっていることが、同じようで。
いつも、情報ありがとうございます。早速、来週あたり行ってみようかと思っています。最近、腰を上げるのが、遅くなりました。

美術館情報です。

ピーター・ドイグは空いているので平日ならいきなり行ってもはいれました(先週水曜午前)。

完全予約制になった西洋美術館のナショナルギャラリー展(私も「不都合な真実」を読んだので、主催のところをジロジロみてしまいましたが)は、全予約なので快適でした。クリベッリは必見と思います。常設展にも所蔵の小さなクリベッリを出していました。


余裕があれば版画素描展示室の「内藤コレクション展」を是非。内藤先生のお書きになったコレクションに至るリーフレットにも感動しました。

Re: 関西もそうですか。

 関西もそうですか。それはそうと、大阪に凄い美術館が出来るそうですね。行ってみたいけれど、こういう風では。
 美術館だけでなく、図書館もせっかくネット予約システムなのに、さっさと休館して、いったいどうなっているんでしょうか。
 学芸員は、この時勢何を考えているのでしょうか。

こんばんは。

前半のお話は全くその通りだと思います。
関西はまだ東京ほど厳しくないかもしれませんが、最近リニュアルオープンした京都市立の某美術館だけは、東京と変わらないと思います。
日時指定の事前予約が必要な上、観覧時間は1時間以内。
常設展は京都市民とそれ以外の人では、入場料も200円以上差をつけてます。
あまりの上から目線的な態度に、そこの美術館には行きたくなくなりました。
門戸を広く開けて、たくさんの人に愛される美術館にして、芸術文化の裾野を広げるのも公立美術館の使命の一つだと思うのですけどね。

絵を観る技術については、基本的には自分が楽しく観れれば好きなように観て良いと思っていますが、観るポイントを押さえていて見ると、より関心が持てるかもしれませんね。
プロフィール

感動人

Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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