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古賀太 『美術展の不都合な真実』 ~ 新聞社の企画展批判、様々な「裏話」から、「本当に足を運ぶべき美術館はどこか」まで、何となく想像していたことが、細かく例証されています。

 美術好きがこの表題を見たら、買ってしまいます。5月新刊の、

古賀太 『美術展の不都合な真実』(新潮新書)

を読みました。
 著者は、国際交流基金や朝日新聞事業部で、展覧会企画に携わった経験がある、現在は日大芸術学部教授(専門は映画史)です。

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 コロナ禍で、今後はどうなるか予想出来ませんが、今まで、年に数度は、美術館の長い行列に加わって(特に、「貸し会場」の国立新美術館や東京都美術館。それに、国立博物館平成館、フジサンケイグループ系の上野の森美術館)、やっと入った館内の人混みの中で爪先立ちに作品を観て、出口近くの特設売り場で何かしらのグッズを買い求めて、満足と、物足りなさを感じて帰途についたものです。
 写真は、私も約3時間並んだ、2016年東京都美術館の「若冲展」の行列。主催は、東京都美術館・日本経済新聞社・NHKなどで、入場者数は、44万7千人。それでも、業界の大台とされている50万に及びませんでした。

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 近時は、ほとんど人を見かけない「常設展」観賞や、あまり一般の人々には取っ付きにくいコンテンポラリー・アート(現代美術)や、東京近辺の埼玉や千葉の美術館に興味を持って、空いている中で、思索しながら観賞するようになっていますが、これとて満足する一方、展示コンセプトや自治体立美術館では地域画壇に配慮した運営に物足りなさを感じることがあります。
 なお、埼玉近代美術館は、企画展2回分くらいの年会費で、年間フリーの会員となれるので、入会して、結果、足繁く通っています。
 一方、自治体の美術館で行われている、市民ギャラリー展覧会などには、一度も入場したことがありません。

 美術に興味のある私にとって、これら物足りなさを感じる原因である「裏話」を、データと例証という「不都合な真実」に基づいて書かれたのが本書です。
「不都合な真実」、というほどセンセーショナルな内容ではなくて、大体想像していることが多いのですが、例証立てて書かれていると、改めて考え込んでしまうところもあります。

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)


 例証立てて、と言うところでは・・、
 今もそうなのかどうか分かりませんが、学芸員(キュレーター)が、美術展主催新聞社の費用で海外出張したとか、飲食費用のツケ回ししたとか、執筆に名門「山の上ホテル」を予約するとか、
また、グッズの売り上げの2~5割が美術館に入るとか、常設展入場分は企画展収入からバックされるとか、
美術記者や関係者接待とか、どの世界でもありそうな、下世話な傍論ですが、改めてちゃんと知ると、唸ってしまいました。
 これはあくまで傍論の話題で、本題の一つは、新聞社・放送局中心のイベント型企画展・特別展批判です。
 コンサートと違って「席」が無いので、いくらでも押し込める、とはよく言ったものです。

 しかし、批判は批判として、私は、新聞社・放送局主体イベント型美術展も、内実の事業部のノウハウと、準備に3~5年かける努力、それも、やがては、広告媒体を多様にするためにPR会社を参加させる、マーケティング専門会社を参加させる、イメージ専門会社や著名デザイナーを参加させる、協賛企業を募る、SNS、ブロガーを利用する・・、と発展させる企業努力には、恐れ入りました。

 感心してはいられません。その様にして、高額の「借用料」を払って(例えば、1994年のバーンズ・コレクション展の絵画借用料は、5億だったとか)海外の美術館から作品を借りるので、海外有名美術館は「メセナ部」を造って日本から多額の〈寄付〉を得るようになり、日本は、〈金づる〉と見られていて、〈絵画貸与〉の地道な文化交流の余地が無くなっているのです。

 もう一つ、フェルメールに関して、独特のコネを持つ、財団ハタステフティンと秦新二理事長の話などは、始めて知りました。

 この「○○美術館展」批判が、多くの頁を割いて詳細に語られています。

 それでも、収入目安は、30万人超、5億円の収入だそうですが(先述のバーンズ・コレクション展では、借用料だけで5億でした。)、会社管理経費を考えると、本当にペイしているのか、著者は疑問を投げかけます(バーンズ・コレクション展の入場者は、107万人、国立西洋美術館・読売新聞社共催でした。)。

 本書中、「メガヒットとなった展覧会」一覧が、1954~2019年まで掲載されていますが、この中で、六本木の「森美術館」(2003年)については、単独企画が多いのが目につきます。

 後半、一転有益なのは、「本当に足を運ぶべき美術館はどこか」が面白い。
 ここにベタ褒めで第一に挙げられているのは、「東京国立近代美術館」(竹橋)です。
 調べてみると、ここで今開催しているのは、「ピーター・ドイグ展」で、なかなか興味深い、学芸員(研究員)の努力の伺える個展です。早速、行こうと思っていますが、コロナ禍で、日時予約制、しかも、〈チケットぴあ〉を通す前売り制と言うのはやや面倒です。これから、皆、こう言う時代になるのでしょうか。

 まあ、あまり「裏」を知ってしまうと、企画展・特別展に向かう足取りもやや冷静になってしまいます。
 でも、折角、行くのなら、漫然と行くのでは無くて、様々な、さらに、気付くところがあれば、問題意識をあたためておく必要があるでしょう。
 なお、英語・ラテン語の《Museum》は、美術館も博物館も指します。

 新書ですし、興味につられて、1日で読了していしまいました。★
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Re: ご丁寧にありがとうございます。

 ご丁寧にありがとうございます。散歩ついでの観賞ができないのがつらいですねえ。で、このブログも本ばかりになってしまいます。オペラは、今シーズン(春まで)、7公演買ってあるんです。本当は、間に、国立劇場の歌舞伎も5回ほど入る予定だったのでが、これでは「感動手習」できません。
 もう、歳ですので、1年は貴重です。ありがとうございました。

わかります。

今のご時世、仕方がないとはいえ、本来は観客が主体のはずなのに、事前予約などは美術館や博物館が主体で窮屈ですよね。
お天気によっては、今日は外出したくないと思っていても、事前予約していたら行かないといけないので、せっかくの展覧会でも気が重くなることもありそうです。
逆に、オペラやコンサートなどは、その日のために観客もスケジュール調整等をするわけですから、ぜひとも開催してほしいですよね。
会場で大声で話すわけでもないので、マスクをしていたら大丈夫なような気がしますが。
今秋のオペラ、開催されるといいですね。

Re: ちょっと愚痴をお聞きください。

 ありがとうございます。
 今は、どこの美術館も入場が面倒で、特に、前払い方式だと、行くのに《気合い》が必要になってしまいます。私のよく行く常設展は、いつもほとんど人がいないのに、こんなのでいいのかと考えてしまいます。
 好きなオペラも、今秋に限って一括購入しましたが、どうも、危なくなりそう。1公演1,300人位ですからねえ。
 ご常連様なので、ちょっと愚痴が出てしまいました。
 これからもよろしくお願いいたします。

こんばんは。

この本の書評、つい最近他でも読みました。
よく売れているのですね。

竹橋の近代美術館は、東京に行くときは時々寄ります。
コレクション展だけを観ることの方が多いかも、ですが。
名作をゆっくり観れるので、気に入ってます。

プロフィール

感動人

Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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