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島田雅彦 『スノードロップ』 ~着想がすこぶる斬新な《皇室小説》ですが、ドラマが足りない。もっとも、あまりドラマが精密すぎると、《問題化》するのかもしれませんが。 

 前回で、英語の慣用句で言う、「奥のコンロに置いた」、つまり後回しにした、本の読書を一応終え、今日は、新刊です。

 新潮社の月刊PR誌「波」5月号で、「皇后陛下が立ち上がる日」という表題で、著者・島田雅彦(1961-)と官邸ジャーナリスト(1975-。中日新聞。)望月衣塑子氏の対談が載っていて、この本を知りました。
 凄い本が出た、と飛びつきました。装幀も凝っています。
 それは、

島田雅彦 『スノードロップ』(新潮社)

です。

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 令和になって、ほぼ10年後と思しき頃の皇室が舞台の物語です。

 雅子皇后を彷彿させる、プリンセス・レイジーなど誹謗中傷され、〈お世継ぎセクハラ〉などで神経が参って精神科医の治療を受けている、不二子皇后が主人公。
 皇后は、ITに詳しい侍女・岡野ジャスミンを雇用し、クローゼットに造った〈秘密情報センター〉と暗号通信を遣って、ハンドルネーム《スノードロップ》(花言葉は、希望、慰め)で、ダークネットに、現首相批判など様々な記事をアップしていきます。

 そのジャスミンを推薦したのは、日本の「#ME Too」を主導した加藤沙織准教授。侍女は、皇室費雇用で、政府の関与無しに選べるのです。

 一方、女官・三浦理香子(渾名は、ミセス・ネバー)は、皇室内に盗聴器を仕掛けてまで、皇室内情報を蒐集して、政府側に伝えています。内閣情報調査室の黒瀬は、ダークネットを察知し、発信元を突き止めようと、ジャスミンを疑います。

 最後は、天皇と公然とダークネットを遣って現政権批判を行い、「令和の改新」を狙い、さらに、舞子内親王の女性天皇の可能性も模索しようとします。政府側は、外遊に出た舞子内親王をCIAを遣ってアメリカに拉致して、取引をちらつかせます。
 因みに、舞子内親王のハンドルネームは、ブルー・ローズです。

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)

 真知子上皇や弟君夫妻、唯一の男子(清仁)も登場しますが、一般に知られているのと同じ程度の記述で、また、大半語られる、アメリカ一辺倒、右派尊重の首相批判も、やや教条的で、驚きが無くて、底が浅く感じられます。
 この首相批判で終わっているところが、本書でドラマを無くしている欠点もあります。

 小説の着想は、すこぶる面白いのですが、皇后の人物描写は、読者の「雅子皇后」観に頼っていて、期待したジャスミンの人物描写も浅い(これが全く惜しい)。
 もっと、皇居・皇室内を克明に描写し、システムやダークネットも詳細に語り、政権批判文も大学の「立て看」の様にせず、何よりも、ストーリーとプロットを緻密に、詳細にすれば、すこぶる面白くなったのではないか、と素人ながら思いました。

 で、僭越ながら、一言で言えば、期待外れ。
 期待が大きかっただけに、残念に感じます。
 もっとも、期待通りの本であまりベストセラー的になると、政治的に批判する人も多くなって、あげく、世の中を騒がし、例えば右翼などのテロの危険も起こりえるのでしょうか。★
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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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