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大木毅 『独ソ戦 ー絶滅戦争の惨禍ー』 ~一読暗澹。空前絶後の《皆殺し》戦争、その理性無き絶滅戦争と報復戦争の実体を新資料で説いた、《2020年新書大賞》受賞作です。

 昨年7月に出版されて以来、興味を持っていましたが、《2020年新書大賞》を受賞したというので、早速、買いました。2月5日出版で、もう、10刷になっていました。

大木毅 『独ソ戦 ー絶滅戦争の惨禍ー』(岩波新書)

です。

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 独ソ戦(西欧では。「東部戦線」とも言います。)については、ベルリン陥落時のソ連兵の掠奪・暴行・殺戮、1,000名近い独市民自殺などは、知っていましたが、本書で戦の全貌を始めて知りました。図も理解しやすい。
 双方、国際法など、全く無視した殺し合いの酷さ、惨憺さに、ただただ唖然としました。

 それは、例えば、日本の人口が、1939年に7,138万人で、戦闘員・非戦闘員あわせて、260万人~310万人が死んだ悲惨さと比較すると、独ソ戦では、ソ連側で2,700万人、独側で600万人~830万人、という桁違いの悲惨さです。

 戦闘エリアの広大さも、例えば、スターリングラード戦役だけで言っても、円を描くと、東京ー横浜ー奈良ー長野ー金沢、位の広大さがあります。

 特に、本書で強調されているのは、ヒトラーだけ悪人では無いと言うこと。
 ヒトラーは国民に負担・犠牲を強いることの無いように、独国民に対してはその優越性を前面に出し、高い生活水準を保たせ、完全雇用を実現し、公共事業を拡大しつつも国民に負担が行かないように占領地住民・敵性住民・ユダヤ人を強制労働力にして、巧みに政策し、貴重な外貨を使って嗜好品・衣料・煙草・コーヒーなどを輸入し、国民は、それに同調し、他方、国軍も、積極的に作戦を練りました。ドイツ国民の《共同責任》を強調します。

 さらに、冷戦が終わる1970年代、さらにソ連邦崩壊で資料が公になるまで、東側も西側も都合の良い独ソ戦解釈を公にしてきました。巷で、刊行されている大半の書物は、それに乗っかった間違った歴史解釈をしていて、それを、きちんと正し、実証研究した第一歩の書が本書、という訳です。

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)

 独ソ戦は、ナチス・ドイツ軍、330万人が、1941年6月22日午前3時15分に、バルト海から黒海までの約3,000kmに及ぶ戦線で、ソ連邦に侵略を開始しました。

 ここで押さえておくポイントは・・、

・ヒトラーは、政権奪取の1933年以前の1923年以来、一貫して、対ソ戦を、人種的に優れたゲルマン民族が、劣等人種であるスラブ人を絶滅、根絶やしにする戦争(「世界観戦争」・「収奪戦争」による「東方植民地帝国の建設」・「人種的再編成」、「絶滅戦争」)と捉えていたこと。
 したがって、戦時国際法無視の捕虜殺害、市民殺害、掠奪も平気で行われていたこと。対する、ソ連も、下記のように同様になっていたこと。

 一方で・・、

・スターリンは、政権奪取後、苛烈な粛正で、主要な、また、粛正で中枢の軍人が大半いなくなって軍が弱体化していたこと。それ故、作戦での意見具申も出来なくなっていたこと。
 開戦時、未だ粛正が続いていたが、スターリン批判を、「大祖国戦争」というナショナリズムで共産主義体制と合一させることに成功したこと。それが、また、《報復は正義》《報復は神聖》の残虐な行動をもうみました。

 特に重要な点は・・、

・独では、英国と戦闘中、ヒトラー以前に、ブラウヒッチュ陸軍総司令官やハルダー陸軍参謀総長ら陸軍首脳らによって、ソ連の脅威(特に、石油基地ルーマニアが攻撃される恐れ)に対する策を練るなかに、対ソ戦の選択枝が入っていた。つまり、ドイツ陸軍が、不本意にヒトラーに引きずられた説は正しくないこと。
(しかし、ブラウヒッチュは、1941年12月の死守司令に反対し、ハルダーも1942年9月にコーカサス地方~スターリングラード攻撃の責任で途中解任され、こともあろうか、その「後任」は、ヒトラー自身になり、作戦を主導していったこと。)

・独は、短期決戦構想は同じでも、石油資源などを重視して、モスクワ攻撃を後にするヒトラーと、モスクワ攻撃でソ連の戦意を挫こうとする国防軍との考えが一致していなかったこと。

・独軍が、モスクワ目前で、「冬将軍」の為に撤退始めたのが1941年12月6日。日本の真珠湾攻撃(8日)を聞いたヒトラーは、12月11日にアメリカに宣戦布告したこと。
・なお、ソ連のベルリンへの攻撃〈作戦術〉が、満州攻撃作戦に引き継がれていること。

・・などです。
 また、残虐なところ、そのほんの「一部」は・・、

・1941年9月から1943年1月レニングラード(解囲)までの、「とろ火で煮込む」という悲惨なドイツによる《兵糧攻め》作戦の一方、ソ連内部でも、飢えた市民が人肉食という理由で、なお粛正されて2000名以上が逮捕されていたこと。

・「出動部隊」という特殊部隊が置かれ、軍に前後して、支配地域の人々を虐殺していたこと。
・ヒトラーは、当初、ユダヤ人を追い出すか、労働力に考えていたが、それでは手が回らなくなって、1941年9月の実験を経て、1942年1月から、「工場式虐殺に至ったこと。

などです。なお・・、
・スターリンが、独ソ戦終盤には、もう、ヨーロッパ諸国の共産主義版図を考えていたのは、重要です。

 本書を読んで、たまたま、朝日新聞で紹介していたのが、ノーベル賞受賞(2015年)作家の、
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 『戦争は女の顔をしていない』
の漫画版(KADOKAWA)です。
 この漫画版か、もとの文庫版(岩波現代文庫)か、いずれにしても、早速、読んでみたいと思います。
 また、子どもの視点からの、
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 『ボタン穴から見た戦争 ー白ロシアの子供たちの証言』(岩波現代文庫)
も読む必要がありそうで、読書候補にしました。★
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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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