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『西洋美術の歴史 7』 ~ 美の永久革命が始まった19世紀。伝統的・古典的な美術と近代的・革新的な美術との葛藤、相剋を中心に、各国の個性的な美術がマクロに描かれます。

 すでに、第8巻を読了しているのですが、今回は、その前の第7巻、

『西洋美術の歴史 7』(中央公論社)

を読みました。
 19世紀美術を扱っています。

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 冒頭に、過去の美術史では、19世紀美術がどのように扱われているか、特に、執筆年代が新しくなるに従って印象派偏重になっていることなどが述べられ、本書の叙述方針の総論(「序章・19世紀美術とは何か」)を経て、各論に入る記述は、非常に分かりやすい。

 それでも、私は、第4章19世紀後半から読み始め、第3章19世紀前半を読み、それから、第1、2章を読みました。
 いつも、他の本を読みつつ、この本を併読して、ゆっくり読むのは、至福の時、でした。
 ミステリーでは、結論から読むのは邪道ですが、このような美術史は、結構、着地点から読むのも理解が深まるものです。

 まずは、先立つ、18世紀、市民革命が起こり、特に、古代ギリシャ・ローマ共和制時代に範をとり、また、デッサンよりも色彩表現を重視した「新古典主義」や、産業革命による科学技術の進歩の一方、自然への畏怖や不安、文学からの夢幻性を感ずる「ロマン主義」の萌芽から本書は、始まりました。

 そして、本論、19世紀。この時代は・・、

 新古典主義の歴史画(入念な画面構成・悲劇性・理想美・典型的な人物像・男性裸体・芝居のようなポーズ)からの、
 ギュスターブ・クールベらの現代風俗画(現実性・日常性・単調な構図・動きに変化の無い身振り・平凡な人物表現)、ジャン・フランソワ・ミレー、オノレ・ドーミエらの農民画への変化、アンチテーゼとしてのロマン主義の異国や中世趣味、文学、国民史、同時代事件の作品。
 一方、身近な現実を描くレアリズム(写実主義)絵画と、ポスト・レアリズム絵画、さらには自然主義への発展は、印象派との折衷を求めます。

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。

 関心を近代都市パリと近郊に持ち、外界に視覚主義的なヴィジョンを向けたエドヴァール・マネと、印象派のモネたち
 印象派を乗り越えようと、外界の現実よりも観念や内面を重視した、ゴッホ、ゴーガンらポスト印象派。それらは、幻想的な象徴主義に繋がります。

 この背景には、17世紀以来のサロン(官展)の衰退と、フランスでは、それを強力に後押しした、第2帝政(1852-70)ナポレオン3世のアカデミー改革(1863)、「落選者サロン」(同5月)の影響の大きさもあります。
(フランスの「サロン」は、1881年には民営化され「フランス芸術家協会のサロン」となり、さらに、84年には無審査・無褒賞の「アンデパンダン展」になっています。)

 同様に、絵画の教育システムも、王立・やがて国立の「アカデミック・システム」から、芸術家同士のグループに移り、そこに、画商・批評家・コレクターという新たな受容の枠組み(システム)が出来て、今日に至っています。
 独・オーストリアで興った「分離派(ゼツェッション)」運動も、同様の傾向の一環です。

 この間、英国では、ラファエル前派(ラファエロやミケランジェロより前のボッティチェリ、ギルランダイオなどに求めた)や唯美主義、それに「アーツ・アンド・クラフト」が先行して登場しました。

「アーツ・アンド・クラフト」同様、美術の枠組みは、絵画・彫刻・建築から、壁紙・家具・書物の挿絵・装幀・ステンドグラス・モザイク・陶芸などに及び、やがて「アール・ヌーボー」など装飾芸術や、クリムトの絵画などに進展し、美術と装飾の境界が揺らぎます。

 多彩な視覚メディアは、写真自身の芸術化を進めると共に、写真に対抗するように、水彩画(ターナーやセザンヌ)、パステル画(ドガやルドン)、腐蝕銅版画つまりエッチング(ホイスラー)、リトグリフつまり石版画(ドラクロワ、ラトゥール、ルドン、さらには、ドーミエのカリカチュアやロートレック、ミュシャのポスターなどに繋がる)が台頭します。
 これらの動きの中で、万国博覧会による、ジャポニズム、(1867年から1900年の)日本の浮世絵の影響が無視できません。続いて、オリエンタリズム(東方趣味)、プリミティズム(原始主義)との接触・影響も見逃せません。

・・という時代です。
 多彩な坩堝が混沌としつつも、現代に繋がる、なんと、豊饒の時代でしょうか。

 さて、今、何を思ったか、
平岩弓枝 『私家本 椿説弓張月』
と、
日本中世史
の本
を読んでいます。★
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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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